キャリア

 自分が頼りにしてきた後輩が会社を去るという。彼の選択を心から応援している。

 

 会社勤めをしていれば避けられないことだし、自分もまた転職組なので人の選択にはどうこう口を挟むのもまた違うとは思う。

 10年以上働いたというのだから、やはり会社にとって彼の存在は大きかったし、私自身、一緒に働いた期間も5年を超えていたので、そういう意味で心中ではやはりざわめくものもある。無いと言えばうそになるだろう。

 彼自身、転職先をきちんと大手に決めてから辞めるのだし、しっかりと業務を引き継ぎ・ないしは引き渡して辞めるのだから立派なものであり、自分が辞めた時とは比べ物にならないくらい、彼の引き際(?)は見事なものだと思う。

 強く彼を引き留める言葉が出てこないのは、自分自身、「転職は一生に何度かはしても良い」、と思っているからである。このスピードの早い激動の時代にあって、一つの職場で一つの仕事で40年間以上勤めあげられる人はなかなかいない。自分のスキルセットは経験からしか積むことは出来ない。経験していないことは出来ないし、人間、やはり業務を通じて学ぶことが一番学びも多い。

 自分の身で言えば、赴任してからのこの数年間でやはり

・英語運用能力、

・プレゼン能力、

・プロジェクトマネジメント、

・対人能力、

マーケティングなど

 様々な面で赴任前を超える能力を身に付けることが出来たと思っているが、これはひとえに2014年当時の状況が私を赴任に追いやったのであって、運だとか周囲の状況だとかでこうした経験を積めるかは変わってくる。いまや、こうした経験を積むこと自体も競争の激しい時代であり、「経験を積みたい、成長したい若手」と、「海外に行きたくない、適当に過ごしていたい、お金以上には働きたくない、責任を負いたくない若手」に大きく二極化している。

 

 仕事を任せる立場になってくるとわかってくるのだが、上層部がこうした経験を積ませたいと思う若手というのは

・前向きで

・やる気があり、なおかつ

・能力が日々実際に向上している成長志向の強い

若手に任せたくなる。逆の場合はなかなか任せたいとは思わないだろう。

 ハードシップや経験もまた一部では「取り合い」「奪い合い」、なのである。

なので、御多聞に漏れず、どこの会社でも「海外赴任希望者」というのは後を絶たないが、これもどこの会社も狭き門であり、順番待ちだったりするので強烈に社内で「自分の興味」と「やる気」と「目に見える実績」をアピールし、勉強し続けない限りはなかなかバッターボックスに立たせてもらえる機会は訪れない。

 海外赴任したい若手にチャンスがなかなか回ってこず、「海外に行かせてもらえそうな会社」に転職する、と言っても、全く周囲からは驚きは無いだろう。「彼、どうしても行きたかったものね。。。」となる。

 それにしても組織としての「後進の育成」という視点で見れば大打撃とも言える。

中途でも新卒でも採用した若手をきちんと育成できるか?はまさに組織の力を試されていると言えるし、中堅・ベテラン層こそがそうした育成や文化を醸成する立場にあるだけに、マネージャー数歩手前の若手が辞めてしまう背景や理由というのはよーく深掘りした方が良いと思う。

 ・組織に必要なのは広く浅くか?それとも深く狭くか?

 ・どうしても自分のポリシー的に受け入れられない人と仕事する羽目になったらどうするべきか?

 ・会社はきちんと自分のキャリアパスを見てくれているか?

 ・そもそも自分の会社は大丈夫なのか?規模とか、事業範囲とか・・・

こうした様々な不安をどうやって払拭するか?それともそもそも払拭なんてしないのか、どうやったらより働きやすい職場になるのか?

 

彼がまた戻ってきたいと思える職場になっていけばいいな、ととみに思う。