2013/08/12_瀬戸内国際芸術祭2013 伊吹島編


きちんと書いておかないと行ったことすら忘れそうなので、書きます!

2013年8月12日 月曜に伊吹島に行ってきました。

■経緯
伊吹島香川県観音寺市の沖合にある人口700人弱の小さな小さな島。いりこ(カタクチイワシ)漁が盛んな島です。今回、瀬戸内国際芸術祭2013の夏限定の会場になってまして、実家から近くということもあって、行ってみることにしました。

■瀬戸内国際芸術祭と観音寺市
7/20から9/1までの会期中の土日の夜には市内の商店街付近で、「よるしるべ」という夜間アートを展示してたりもするそうで、県外からの観光客の呼び込みに画策してる様が伺えます。観音寺市にはその他にも、豊浜町の一宮公園の海岸にイサムノグチのモニュメントが置いてあったり、琴弾八幡の展望台から見える寛永通宝の砂絵など、見応えのそこそこあるモノがあったりします。頑張れば自転車でも回れます。



伊吹島の思い出
昔、祖父が存命だった頃に、祖父と父と妹と四人で伊吹島へ魚釣りに行って以来、20年ぶりくらいの来訪です。いりこ漁が盛んなので、いりこ以外の魚には目もくれないのが伊吹島の特徴ですが、(島スープのおにいさんもそう言ってましたが)いりこが獲れる近くでタチウオが獲れたり、網から漏れたいりこを食べるためにボラが泳いでたりするのが、印象的な島でした。ボラを釣ろうとして釣竿が折れたり、当時980円の安物の竿を投げ釣りで使おうとして振りかぶったら、その力で折れてしまったり、と竿が折れた記憶が強い島でもあります。当時、かき氷の自販機があって、シロップにアリが混じってたのもいい思い出です。今回、その自販機は見当たりませんでした。伊吹島には小学校と中学校があって、私の中学時代の副担任が、伊吹中学に転任していった際に「あれは島流し」みたいに揶揄してた生徒が居たのを思い出しました。今、考えると子どもって残酷…。

■アクセス
さて、観音寺港から伊吹島には小さなフェリーで向かいます。観音寺駅からはシャトルバスも出てるとのことで、街を挙げて瀬戸内国際芸術祭2013を盛り上げようという力の入れよう。

そんな観音寺港にマイカーを駐車して(有料終日500円)、往復1000円のフェリーに乗って朝7:45発で伊吹島に8:20くらいには到着しました。フェリーはまずは島民が優先搭乗。
フェリーはほぼ、満席で昔は余裕で寝っ転がってた船室も人でごった返していました。とりあえず、座れたものの、フェリーと言えど直島に向かう時ほどのゆったり感は全く無かったです。100人くらいは乗れるのだろうか。


■港〜しまつくりラボ〜イス
島に着いたらすぐ目の前に見えるフェリー待合室に地図があったので、早速GETしました。大漁旗がお出迎えしてくれ、まさに港町!漁師街と呼んで差し支えのない雰囲気でした。
連日35度を越える快晴も手伝って澄み渡る青空にさんさんと照りつける太陽。ジリジリという音が聞こえてきそうなくらいの暑さが朝から始まっていました。
地図を見ながら、どこから行こうか思案してると、瀬戸内国際芸術祭2013の青いTシャツを着たガイドさんらしき人が「こっちが近道ですよー」と言ってるのを耳にしたので、これ幸いと思い、そのガイドさんに従って地図には載ってない農道と階段を登り、いきなり伊吹島の港の反対側に向かいました。通常の順路とはほぼ、逆回りと思われるその回り方のおかげで、割とそのあと快適にアートを楽しめることになります。ただ、その坂道は可愛くない傾斜で、とんでもないしんどさでした。汗がしたたりおちる…。「素敵なアートでダイエット!」って銘打ってもいいくらいには汗かきますね。

坂を登り切るとそこからは下り坂で一気に島の反対側の海岸に向けて下り坂でした。

まず、最初に目の前に飛び込んできたのは、ある人が海の方向に向けて作った大きな木のイスでした。人が座るには大きすぎるそのイスは木でできていて、誰が落書きしてもいいようになっていて、マジックが置いてあって色んな人が思い思いのメッセージを残してました。なんと、芸術祭の作品ではないそうなのですが、ここで記念写真を撮る人が後を絶たないのだとか。写真を撮りたくなるイスを作ることに長けてる芸術家さんなのだとすると、こういう人にこそ観光振興のための仕掛けをやってもらえばいいような気がする、と感じましたが…苦笑。

そこから、歩いて、伊吹しまつくりラボに向かいました。ここは入場料300円で、廃業した網元の使っていた漁師小屋を島の風土史などを展示する場所として、活用していました。どちらかというと、アート作品と言うよりは、島の文化や歴史を学ぶための場所といった感じでした。そして、ここでガイドさんの話が非常に面白く引き込まれるようでした。
・昔、ベビーブームの頃には小学校だけで生徒が900人もいたこと。
・いまや、小学校と中学校合わせて20人しか生徒がいないこと。
・島民のピークは4400人もいたけど、今では700人を切る勢いで過疎化していってること。
・いりこの網元は17件ほどあること。島自体が岩山なので、湧き水はなく、雨水とか溜めて飲んでたこと。
・基本的に水道は観音寺から地下に水道管埋設して安定供給されるようになったこと。
伊吹町自体には無人島を含めると本島含め島が三つあること。
・島には昔は映画館やパチンコまであったが、今はもうないこと。

そんな話を聴きながらしまつくりラボにある昔ながらの網元の装備品の数々を観ながら、風土史やら建物の歴史を追った話など、とても興味ある展示内容になっていた。

さて、そんなしまつくりラボでら本当ならラムネだとか揚げ物が楽しめたはずなのだが、残念ながら時間が早すぎてまだ開店してないとのことで、そこからガイドさんに連れられて、次の場所へ。この次の場所、というのもデカイイスを作った人が作ったというハートのベンチでした。ここもまた写真撮影スポットになってるとのことなのですが、瀬戸内国際芸術祭の正式作品ではない、とのことで、なんと、ここには作者の方までいらっしゃいました。シーカヤックが趣味の作者さんは観光客のために写真を撮ってあげたり、一緒に写ったりしていました。ここは夕陽がきれいなところで…という解説があったので、きっとキレイな夕陽が観られる場所なんでしょうね。周り方を変えれば夕焼け時に来られるかもしれませんね。

■レインボーハット
そこから、歩いて、次の場所へ。向かったのは、関口恒男さんという方が制作したレインボーハットというアート作品。これがまた、面白い趣向の作品になってました。大きなテントの天井に穴が空いていて、そこから太陽光を取り入れる。その下には水たまりがあって、いくつものプリズムが置いてあるわけです。このプリズムが太陽光を受けて虹色に光ってテントの天井に当たって虹色の反射光が見られるようになっています。暑い中でも幻想的な空間を作り出していました。

■歩み〜郵便局跡〜夜想曲
このレインボーハットの後は、段ボールで作られた亀が印象的な「歩み」という作品を観たり、昔の郵便局の建物を観たり…。この郵便局の鬼瓦には郵便マークが入っていたりして、貴重なものなのでは、と思いました。
また、震災で被災した石巻の小学校にあったピアノ二台を使った作品「夜想曲」という向井山朋子さんの作品も展示されており、これもまた震災の鋭い爪痕を伊吹島で感じられるという作品になっていました。瀬戸内国際芸術祭の後は世界の芸術祭でも展示される予定だとか。

■産院跡地
また、伊吹島に昔あったという、産院の跡地にも向かいました。ガイドさんもそこで生まれたのだとか。今となっては空き地しか残っていないのですが、当時、伊吹島で出産した後、一ヶ月程度はその産院でゆっくりと妊婦が過ごすことができていたそうです。家事がまだまだ重労働だった時代に妊婦をねぎらうための、建物だった、とのことで、歴史や時代を感じました。昭和の初め頃から中頃まであったそうですが、今はもう姿を消してしまったそうです。

■EAT&ART
さて、そこから500円で島スープを振る舞うEAT & ARTという作品へ。これもまた作品の一つだそうですが、島特産のいりこ以外の食物をふんだんに使った冷製スープになっていました。10:00に並び始めて10:30の開店までに68人もの人が並んでいました。もっと並んでる時もあったそうで、この小さな島にたくさんの人が来場してることが伺えます。
島スープを購入して、公民館で食べることになったのですが、ここまでガイドさんにくっついてきていたのですが、そのガイドさんは実は県外からのある観光客さんが、個人的に頼んだボランティアガイドさんであることが発覚しました。そのガイドを依頼したというここまで一緒だった観光客の方とその場の流れで一緒にお昼ごはんを食べることに。私は冷製スープでお腹いっぱいーと思っていたのてすが、その方は色々とカレーとか買ってきて、少し分けてくださりました。美味しかった!

■小さな島のささやき
公民館ではなんだかんだと一時間くらい居たのですが、その後、ガイドさんとその観光客のNさん(仮名)と一緒に保育園の跡地にある展示物に。ここは民俗資料館的位置付けで内容は少々、しまつくりラボとかぶっていました。

そして、そこにはキム・テボンという方が制作したという「小さな島のささやき」、という作品。これがなかなか面白いもので、子どもが船に乗ると、反対側の仕掛けを大人が押してぐるぐる回すと船が前に進む、という古い遊具を活用した作品でした。この遊具を回すのをガイドさんとやろうとしてたのですが、あまりの回す速度の速さに驚いて途中でよけてしまいました笑。めちゃめちゃ速くて、

「なんで、そんなに速いんですか!」と聞くと
「ギア比の関係であんまりゆっくり回しても少しずつしか進まなくて面白くないのよー。どうせ回すならパーっと勢いよく、ね?」という景気のいいコメントをいただきました笑。

■トイレの家〜沈まぬ船
そこから旧伊吹小学校校舎へ。
校舎の前には石井大五さんという方が制作したという「トイレの家」という公衆トイレ兼作品もありました。これ、スリットがたくさん入っているなかなか建築が難しい作品だっそうですが、周りから眺めるのもよし、中で用を足すもよし、という面白い作品になっていました。
さらに、小学校の中の展示物「沈まぬ船」がこの伊吹島のアート作品でも最も大がかり、かつ見応えのあるモノでした。
小学校の校舎内部を丸ごと使ったいりこ漁を表現したアート作品でした。うーん、ダイナミック。これはかなり見応えがありました。

この小学校でガイドさんとはお別れすることになり、私が観終わった後、流れでNさんと港まで戻ることになりました。Nさんはその小学校の中にあるうどん屋さんでうどんも食されてました。(すごいなあ)

港に向かう道のりで、いりこ飯(炊き込みご飯風)を売っており、思わず買ってしまいました。300円でしたが、なかなか美味しかったように思います。13:30のフェリーに乗っかって、伊吹島を後にしました。滞在時間は約5時間、割合のんびりとサラッと回れる島、という印象でした。ガイドさんに案内してもらったおかげで濃密でもありましたし。


その後、Nさんが風呂入りたい!と仰っていて、観音寺駅前で買える「おとくちパスポート」に琴弾回廊という観音寺港の近くにあるスーパー銭湯の入湯券をお持ちでしたので、私も、銭湯に入るつもりだったので、ついでに私の車に乗っけて行くことになりました。銭湯に入ったあと、一宮公園の海岸にあるイサムノグチの作品群もついでに観てから、Nさんは地元に帰って行かれました。ま、こういうのも一人旅の醍醐味ですよね。旅は道連れ、世は情け。

20年振りに訪れた伊吹島、忙しく都会で働いてると、こういう島にのんびりとアートに触れてリフレッシュしたくなる人たちが訪れるのにはなかなか良いのではないか、と思いましたし、とても楽しかったです。

アート作品や島の雰囲気ははこの方のブログが写真付きでわかりやすく網羅されてましたので、オススメです。
http://m.blogs.yahoo.co.jp/bbtwf213/39588711.html