韓国から見た日本の電機産業

仲良くなった韓国人の友人から色々聞いていると面白かったので備忘録としてメモ。

 

・韓国でもソニーがクールな時代はあって、90年代はそうだった。MP3プレーヤ―やパソコンなどなど。だが、その時代はそうは長くは続かなかった。ただ、最近のソニーイメージセンサー戦略やBiz戦略はとても戦略的なものを感じるし、うまく大きな市場・顧客と付き合っていると感じる。

 

・韓国の某電機の大企業では最近、組織のフラット化が進んでいて、以前のように課長・部長という文化や肩書が無くなりつつあり、シリコンバレーの企業のようになりつつある。また見た目でHigher levelのManagementかどうかも見極めることが難しくなりつつあり、年齢問わず少数の能力のある人間が組織を率いる、という文化がここ2-3年でできつつある。

 

・韓国では長年、Galaxy Noteが大きな画面のスマホペンタブレット的な使い方のスマホというMarket Educationをしてきたので、大画面スマホが受け入れられる下地ができている。

 

・2010年代、T芝に彼が出入りしていたところ、T芝では自社の派遣会社から大量の若手エンジニアが紹介予定派遣として派遣されており、年配のエンジニアの東芝本体採用の人たちと一緒に働いていた。本体採用でも子会社採用でもやっている仕事は殆ど同じなのに、待遇が違い、その違いはメールアドレスで見分けることが出来た。

紹介予定派遣の若手はたくさんの仕事を担当していて夜中まで働いていたが、ボーナスも殆どなく、給与も安く身を粉にして働いていた。給与も安く責任の無い仕事なのだからそこまで頑張ることは無いのではないか?と問いかけたら、彼は将来、自分が本体採用になる可能性に賭けて頑張って働いているとのことだった。ただ、通常、本体採用になるケースは大変稀であるというのは派遣の彼もわかっているようだった。ただ、本体採用になれば、仕事をずっと続けることが出来て、定年延長も被雇用者の意思で継続できるそうで、そうした待遇を求めて、彼は頑張っていたそうだ。

 T芝はその後、電機産業で急速に競争力を失っていったが、こうした内部のエンジニア育成に対する姿勢や、一度正社員になってしまったら長期安定で競争が無いことが企業の競争力や活力に影響した可能性はあるのではないか、と韓国人の彼は思ったそうだ。

 

・2010年代、M下にも出入りしていた時、M下は今は無き、プラズマディスプレイにまだ拘泥していた。LCDを売り込みに行った韓国人の彼は、プラズマディスプレイでしか大型ディスプレイは達成できないと言われた。また、ついにLCDが世に出回り大型化・低コスト化に成功した頃に再度訪問すると、LCDの細かなスペックの差分や要求仕様を満たすように言われ、「そんな細かいところをいちいち直していたら、時間だけが過ぎて、マーケットを取り逃すよ」と伝えたが、市場にブランドと確かな品質のTVを出すことにこだわったM下はその長大なSpec Listが満たされることばかりにこだわり、商機を逸してしまった。そうこうしているうちに、プラズマディスプレイが市場を席捲することはできず、PDPを撤退する羽目になり、LCD TVでも市場から殆ど締め出されてしまった。一度、大型薄型TVで韓国ブランド認知されてしまえば、次からもそのブランドを買うという意味で、早期に早急にある程度のSpecで市場に参入できなかったことがM下のTV ビジネスの凋落を招いたのではないか、と彼は言っていた。大戦略を描かず、消費者が気にしないような細かいことにこだわったことがM下の凋落に繋がったのではないかと彼は思ったそうだ。

 

「韓国から見た日本の電機産業」というのはなかなか面白い視点だった。