大河ドラマ 「麒麟がくる」 の感想

麒麟がくる

 

面白かった。

大河ドラマをこれだけちゃんと見たのは2016年の真田丸ぶり?西郷どんもそこそこは観てたけど…。(よく、いだてんが面白かったとは聞くものの、観てませんでした…惜しまれる) 

終わり良ければ全てよしというわけでは無いが、最終回はある程度満足の得られる展開であった。

 

長谷川さんキャスティングの時点でシンゴジラからの流れのキャラ作りになるのは見えていたが、やはり生真面目かつ実直、誠実な光秀像で作り上げてきた。

 序盤は1話からロケもそれなりにあり、激しい殺陣もある躍動感のある光秀が随所で見られた。長良川の戦いなどは道三の戦いだが、川を中心にかなり見応えあるシーンがあった。特に川を馬で攻め上る道三、そして息子との一騎打ちは出色の出来でした。

 コロナ禍による放送中止からの再開後はロケは減り基本的には室内劇+ナレーションによる進行が目立ち、そこは残念な点だったが致し方ないところだろう。後半は本来、光秀は戦争しまくってるので、合戦シーン目白押しだったはずなのにそれが殆ど見られなかったのは残念。

 

 麒麟がくるはとても面白い題材だっただけに、44回と言わず、50回くらいの完全な構成での内容を見たかった。これは大変に惜しまれる点。本来の光秀のクライマックスである秀吉との戦いである、天下分け目の天王山、山崎の合戦がナレーションで割愛されるなんて、というのもやはり沢尻エリカの件による撮り直しコロナによる放送中断による回数減が影響したと考えるべきなのだろう。

 腹黒な秀吉という秀逸な役作りを序盤から展開していた佐々木蔵之介の秀吉との合戦模様は是非とも見たかったところだ。

 また、恐ろしいほどに序盤から御使い人生で、火縄銃を調べに行ったり、信長を調べに行ったり。まさにクエスト人生なわけで、これはネット上でもかなり揶揄されていた。(観ていて面白かったけど)

 

daddys-life.com

 最後のクエストは「家康の饗応役を務めよ」、で完遂する前に信長からは任を解かれて、無理ゲーな役割である義昭暗殺を回されてしまった。(史実には無いそうで…

 これを断ることで光秀は最後のおつかいを断って自分の考える麒麟、天下泰平の世に向かって本能寺の変に加速していくわけです。

 

 よくよく考えれば、光秀は最後の最後まで主君と仰ぐ人が変わり続けている。

斉藤道三→朝倉義景足利義昭織田信長と変わり、治めている国は坂本から丹波に変わり大名になっていくものの、どこまでも主君がいるイチ武将に過ぎず、自分の頭で考えて、自分の足で歩き出したのは本能寺の変から山崎の合戦の間だけだったわけですね。(11日間と言われている)

 なので、だからこそ、ここが割愛になったのは残念だったなあ。

麒麟とは誰なのか?」と言われてきたが、長谷川さんが演じる光秀が実際に麒麟になろうとしていた時間をもっと観たかった。麒麟がくる、のポスタービジュアルでも暗に最初から麒麟は光秀だと言ってることに気が付いた。(とはいえ、時代に安寧をもたらしたのは光秀ではなく、徳川家康であったわけだが)

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 それにしても、放送開始前は織田信長染谷将太が演じるというのを知り、彼は若すぎるし、大丈夫なの?という気はしていた。(役者としては優れてるし、他のドラマでいろんな役で彼を観てかなりキレてる役者とは思っていましたが) 

 実際に放送が始まってからは「他人から褒められるのが誰よりも好きな承認欲求の塊・お化け」みたいな新しい信長を見事に提示してくれた。

 彼の不穏さが毎回、きちんとシーンに活かされていて後半どんどん不穏になっていくのが見ものだった。特に浅井朝倉両軍に挟み撃ちされたことがわかるシーンでの唸り声のシーンなどは相当白眉と言うか、彼ならではの演技だったと思う。(そこで唸るのか、という意外さというか) 

 明智光秀に褒められ、のせられ、天皇に褒められ、のせられ、どんどん高みに登っていった信長と、信長を影に日向に献身的に支えてきた光秀が最終話でお互いに話すシーンはこれまた脚本やこれまでの演出がきちんと結実していて良かった。

 信長がのんびり暮らしたいなどと呟くのもまた意外な一面であり、それくらいには光秀に心を許していたことが窺える。

 濃姫正親町天皇や関白にまで信長殺しを教唆されるというのはなかなかの展開だった。

 そのほかにも脇を固める俳優たちの名演が目立った。光秀を困らせる上役としての存在であった斉藤道三を演じた本木雅弘や、足利幕府で光秀の足をひたすら引っ張った摂津晴門を演じた片岡鶴太郎など。特に摂津はここまでフォーカスが当たることはまずなかった人物だったのではないだろうか。なかなかに嫌味ったらしいキャラクターを片岡鶴太郎が見事に演じていた。

 あとは吉田鋼太郎演じた松永久秀などは序盤から登場し、最終盤にかけても存在感があり、まさに光秀と信長の仲を違える最初のきっかけを平蜘蛛の一件に置くという脚本の妙から、大きな影響があった。(平蜘蛛の件は概要だけ考えると、そんな些細なことで!?という事件だが、松永久秀明智光秀がずーっと並々ならぬ関係であったという背景が描き込まれてきたあとの平蜘蛛事件なので、納得感があった。)

 また、足利義輝や義昭も面白い描かれ方、対比のされ方だった。義昭演じた滝藤さんにはいつかもう少しメイン寄りのキャラも演じて欲しいものであるし、「剣豪将軍」足利義輝を演じた向井理もなかなかにいい味が出ていた。谷原章介演じる三渕氏も良い感じの「キレものの補佐」感が出ていた。

 

 狂言回しとしてのオリジナルキャラクターも何人も出てきたが、お駒ちゃんや東庵先生のお医者という設定起因の好き放題加減は見ていて楽しかった。そんなにそこらじゃう出入りできますか?みたいな。義昭とお駒ちゃんの仲などなかなか面白かった。

 

 2021年の大河ドラマは「青天を衝け」、という渋沢栄一のドラマ。一話をまだ見ていませんが楽しみです。パリのロケなどが出来ないのは残念だけど、やり切って欲しい。