昇格試験/外部アセスメント攻略  

■人材アセスメント、昇格試験について

 この記事では一般的な企業で外部業者がおこなう昇格試験や研修で行われるアセスメント試験に関しての解説と攻略について取り上げます。

※この記事は随時、更新予定です。

 

  •  外部アセスメントって何?
  • この記事を書くに至った動機
  • 概要
  • 評価方法
  • ポイント

 

■外部アセスメントって何?

 まず、この外部アセスメントという仕組み自体は1970年代頃からアメリカの主に諜報活動を行うような軍が発祥で、アメリカから日本へは輸入されてきた仕組みだそうですが、会社によって導入されていたり、されていなかったりするので、必ずしも誰にでも関係する話では無いです。

 ただ、もし、自分の会社にこうした外部アセスメントを導入していたりする場合には多少は役に立つ話として書けたらと思います。

 

 人材アセスメントにはこんな記事もあります。人材会社が主に企画宣伝し、企業の人事部が研修や評価システムの刷新のために導入してるわけですね。

www.kaonavi.jp

 

■この記事を書くに至った動機 

 さて、私がなぜこんな記事を書こうかと思ったかと言うと、これまであまりに悔しくて悔しくて記事化していませんでしたが、数年前にこのアセスメント試験が導入された頃に誰もまだ周りも先輩上司も受けたことが無い状態で自分が受け、結果として落ちてしまい、大きくモチベーションを落とす結果になったから、です。(最近雪辱を果たしました)

 その時は、情報収集をしていなかったせいであなどってしまっていました。担当としてはしっかり結果を出してきた自分に酔っていたところもあったのでしょう。

 

その時、不足していたことを振り返った記録がこちら。

 

1.侮り

全ての根幹。周りからの評価の高さやコメントにすっかり調子に乗ってしまった。試験そのものを甘く見て油断していたことが最大の敗因。見くびってしまった自分が悪い。

 

2.侮っていたからこその情報不足

外部アセスメントについて事前の情報収集を怠った。インバスケット演習などは2010年頃からブームになっていたことを事前に少しでもググって情報収集すればわかること。言い訳として社内にそうした試験を受けたことがある人がいなかったことが挙げられるが、数分真面目に調べることもしなかった。事前研修もあったのだから、出来たことではあるはず。

 

3.情報不足なので、事前準備不足

参考書を読んで臨むべきだった。外部アセスメントは大企業ではどこも取り入れており、大手材料メーカーや部品メーカーも取り入れている。そういう意味では、事前にルールを知り、出来るだけの想定練習はしたうえで、臨むべき類のものだったと言える。思っていた以上に短い時間で受験者の細かい所作や表情、言動を注視して読み取る試験であるという事前情報並びに覚悟が足らなかった。全ての時間を試験官は見ていたわけでは無かった。

 

 

くやしさがにじみ出ています。。。準備もせずに臨んでクリアできるほど生易しい試験と基準ではなかったんですね。試験内容はプレで情報があったものの、基準がかなり厳しく、落ちたと知った瞬間に驚いたくらいです。(自分はできていたと思っていた。恥ずかしい話ですが。)

 

 そして、周りでもこうした試験に自信を打ち砕かれたり、キャリアを見直すことになったりする人たちも出てきたりして、この試験そのもののあり方自体には一応納得しつつも、この試験自体に一喜一憂するのもまた本質ではないと思うからです。

(「TOEICでハイスコアだからといって、英語で仕事が出来るわけではない」のと似ている)

 この試験自体は先述の通り、それなりに長い期間、様々な会社で運用されてきた、ある程度確立された手法ではあるため、管理職への適性を見るためにはそこまで悪くない試験とは思います。受かれば、それなりに「一定の能力のある人」という箔も社内的にはつきます。(基準は各社で違うため、社外ではどうかなと思いますが)

 ただ、外部アセスメントは情報やそれに基づく事前の準備が足りなければ、合格基準設定によってはいとも簡単にあっさりと落ちる試験です。いくら会社に貢献して来た人でも試験の成否には全く関係ないこともありえます。

 (※このアセスメントを昇格者の適性を見るために昇格後に設定している会社もあるため、このアセスメントを試験として運用してる場合に限った話になりますが…)

  日々業務で頑張ってる人たちがこんな試験(失礼)で落ちてモチベーションを下げたり、荒れたりしてしまっては元も子もないし、大切な人材が会社を去りかねないとも思いました。

 まずは試験についての情報をきちんと知り、どういう試験かわかった上で対策して臨めば、受かる確率は確実に上げられると思います。(この試験は極めてその人その人の特性が露わになってしまうので、誰もが受かるという保証はできませんが。)

 

 逆に下記のような記事もあり、導入されているアセスメント自体が意味があるのか、という議論もありますが、会社で導入されてしまったからにはそう簡単には取り下げられないでしょうから腹を括るしかありません。 

www.human-logic.jp

 

 

◻️項目

一般的にはオーソドックスなアセスメントの構成は下記の4項目。

  • インバスケット
  • 面談
  • 集団討議
  • 分析発表

 

 いずれの試験においても、

「限られた時間で」

「定められた役割を演じながら」

「一定のストレスを受ける方法で(後述)」

業務を処理したり、討議したり、分析したり、発表したり、面談をする中で、どういうアウトプットを出せるかアウトプット振舞いを見る試験です。

 インバスケットや分析発表がテクニカルスキルを中心に見ており(ヒューマンスキルも見ているが)、面談と集団討議はヒューマンスキルを中心にみています。

 

www.attax.co.jp

 

◻️評価方法

 会社ごとに定められた15-25のディメンションという評価項目を1-5点で点数付けて、各試験でどれだけそのディメンションが発揮できたかを見る試験になります。

たとえば、20項目のディメンションがあれば、5×20=100点満点での採点になるわけです。

 (採点結果そのものは外部のアセスメント会社が行い人事部に渡すため、アセスメント受験者には細かい点数は公開されないことが多いと思います。受験者にはフィードバックレポートという形で、強み弱み、をフィードバックしてくることが多いと思いますが、これは再試験者にはかなり重要なレポートになります。再試験に臨む人は決してむしゃくしゃして捨ててはいけません!) 

 2回目のアセスメントで落ちる人はこのレポートをきちんと読むかどうか?

 読まないで片づけてそれ以降見ない人や一応見るが、アセスメントに半信半疑な人は能力がきちんと評価されたかどうかも懐疑的。

 こういう人たちはアセスメントのフィードバックをきちんと受けとめて改善に取り組まないわけです。1回目のアセスメントのフィードバックを受けて仕事振りが変わったかどうかが大事です。取り組まなければ、再アセスメントでも結果は同じになってしまい、また落ちます。レポートを真摯に受け止めた人は強みや弱みをきちんと次回までに克服したり伸ばし、仕事の仕方を変えた人が合格できるかと言えば、また落ちることも十分、あります。

 アセスメントで実施する演習は課長の仕事のシミュレーションになっており、管理職、課長としての仕事を与えてアウトプットを出させようとしている。つまり、「未来の自分」をアセッサーはみようとしています。

 アセスメントで取り組む内容は課長となった時の仕事振りを見ています。ここを理解できるかどうかが大きな分かれ道になります。

 係長として優秀なアウトプットなのか、課長としての素養がちゃんと出たのか、ここが合格の境目になります。アウトプットの中で課長になれる人を引き上げるのがアセスメントの役割となります。「課長としての権限は無いが、課長としての仕事を現在進行形でしている人」はアセスメントは恐れるに足らないとも言われています。

 

◻️ポイント

ここからは具体的にポイントを列挙していきたいと思います。

 

・限られた時間(大体、少し不足気味になるくらいの時間)

 これはストレス環境下での対応や反応行動を見るために時間に制限を設けています。また、場面設定としても、割と差し迫った受験者を焦らせるケースが多い。(ex. インバスケット、分析発表、面談)これは試験の仕組みとしてはわざとそのようにストレスがある環境を作り出しています。

人はストレスがかかると、できることしかできなくなる。

出来ること=日々やっていること。これがスキルということになる。つまり、スキルが出てしまう。

受験者にストレスをかけるために、わざとインバスケット時に個人面談をやったりします。もちろん受験者はそんなシチュエーションは慣れていないし、講師は百戦錬磨なのでうまくいかないわけです。面談でけちょんけちょんになって、その後また、インバスケットに戻って、インバスケットを受けたりすると精神的にうまくいきません。できることしかできなくなるわけです。

 

・手書きが多い

 インバスケットや分析発表などでは手書きが要求される場合があります。コロナ禍の影響でウェブベース(パワポ)になったところも多いとは思いますが…

 手書きも最近はデスクワーカーなどは殆どしなくなったからこそ、うまく書けない、漢字忘れた、などのストレスがあるわけですが、これもまたストレス環境下での対応や反応行動をみるために文字表現にも制限を設けています。(これがこの試験のいやらしいところでもある) 

 

・場面設定や多く(ちょっと多すぎるくらい)の背景情報

 情報の取捨選択や背景への想像力、処理能力を見るために過剰ともとれるほどの情報が散りばめられているケースが多いです。

(大量に情報があるため、不要な情報もあるが、一見不要でも活用方法次第では使える情報もある(面談時の部下の属性や趣味情報など)

 

・発言や振舞い、記載内容など具体的なアウトプットすべてが採点対象

 その場その場できちんと表現ないしは発言としてアウトプットしないと何も評価されない(逆にアウトプットの仕方がディメンションに沿っていれば些細な発言も全てがポジティブに評価される対象になる)

 たとえば、せっかく頭の中や紙の上で考えたことも、発表するプレゼンに書かなければ伝わらないし、その場その場で言わなければ相手には伝わらないように、この試験では内心で思ってることを黙ってることや自分のためにメモ書きすることは殆ど採点には好影響がありません。むしろマイナスが多い。

 変な話、集団討議で、テーマに真剣に向き合い意見を言おうとすればするほど、メモを取ったり考え込んだりするわけですが、それらは採点上、高評価を得られないことが多いです。「考えをまとめたいのでメモを取りますね」と周りの了解を得る、という裏技もあるようですが。。。

 この振舞いに関しての採点については「フィギュアスケート」になぞらえた方がいるのですが、言い得て妙だと思います。フィギュアスケートの採点者はやったことが無いですが、おそらくそれくらいの粒度では振舞いや発言を見ているということだと理解しています。手の使い方、挙げ方、身振り手振り目くばせ、心遣いetc....

 「課長として仕事をやってくれれば課長らしい仕事のアウトプットが出る。つまり、課長になりきる。現場の長から経営の側に立つが、そういうアウトプットが出るかどうか。」

 

課長になりきるとは、課長として演技をして、ロールプレイをしてということ。

そんなに難しく考える必要はなく、ビジネスマンとして部下や上司に相対しているときもプライベートの立ち振る舞いとは違うはずで演技を人は誰しもがしています。演技で一番簡単な方法は人の真似をして、真似から入ること。自分の周りの上司などで尊敬できる人の真似をして考え方や見方を真似してほしい真似するところは物言いや行動。

また、「内面の思い」はアセスメントでは触れられない。

アウトプットで出た言動や立ち振る舞いをアセッサーは評価します。課長としてのふるまいや言動ができるか、がポイントになります。

 

 

・衆目

 グループワークが多いため、同僚や他人の目に晒されながらのワークになる。周りから出来ると思われている人が受かるわけではないという点も重要なポイントです。360度評価でもなければ、相対評価でもなく、基本はアセッサーが見て、客観的に判断される評価方法のため、周りの同時に受験している方々から何を褒められたり、けなされてもあまり気にする必要はありません。(けなされることはあまり無いとは思いますが)

周りには翻弄されるべきではなく、「着々と一挙手一投足、自分を相手から良く見えるようにアピールできないと絶対に受からない試験」と思います。

 

 

・これまで成し遂げてきた成果は関係無い

 結局のところ、これまでの業務の成果や成し遂げてきたことはほぼこのアセスメントには影響しません。むしろ、これまで会社やチームで「プレイヤーとして」高い評価を得てきた人たちは企業が定めているディメンションによってはこの試験に落ちる可能性が高まってしまうこともありえます。

 

 なぜなら、この試験は「マネージャーとしての将来の適性」をみる試験であって、「プレイヤーとして現在優秀かどうか」は殆ど関係無いからです。

 

 例えば、これは自分の例に近いのですが、「マネージャーや経営層から権限移譲されて即断即決即行動できる担当者」は優秀だと評価を実社会では周りからは受けますが、実際に同じような発言や行動をアセスメントで取れば、「独断専行で拙速な判断を繰り返し、周囲との調整を軽んじて一人の力で周りの協力も理解も得ずに突っ走るマネージャー」という評価になります。これでは多分、受かりませんよね。当たり前ですが、ロールプレイングでも報告・連絡・相談ももちろんしていかなければならないわけです。(でも、試験中にそこまで思い至らないことも多い)

 

  大多数の人は係長の役割で取り組むことになります。経営者からすれば、優秀な係長はずっと係長でやってもらったほうがよいわけです。組合員から非組合員、現場から経営へ、という観点で見れば、現場で優秀な人を経営に引き上げる必要はないのです。賃金も安いし優秀ですし。ただ、経営を成り立たせるために、経営に引き上げていく。課長としての素養がある人を選び出すのがアセスメントであると理解する必要があるわけです。

 

次回以降の記事では個別の種目を取り上げます。