雑感 大統領選挙・就任式までのあれこれ

 

大統領選や就任式にまつわる米国在住者としての肌感覚を聞かれて、下記のようなコメントをしたのでメモに残しておきます。

 

以下メモ

真っ青な民主党の州であるカリフォルニア州シリコンバレーにいると同僚も知り合いもみんな割合と当然、バイデン派でして、トランプ当選した2016年にはみんな悪夢だと言っていました。

 トランプは2016年の就任当時から自分が勝ったにも関わらず選挙不正があったことを主張していました。(結局、証拠は出てこなかったわけですが)

今回も、不正があったという論調ありきで議論を展開しており、証拠は後から探すというお話ですから、最高裁にも認められませんでした。(判事はトランプが任命したわけですが)不正有無に関して言えば、確認されたものもあったようですが、大勢を覆すほどのものではなかった、ということになるかと思います。選挙システムにアメリカのUSPSを使うこと自体が微妙だなとは確かに思います。(USPSは正直、かなり信頼性も低いわけですし)州ごとに代理人を選出するという今のUSの選挙システムが古すぎる、時代に即していないというのもまた言えます。これは今後、議論されて改善されていくべきでしょう。今のUSであれば、直接投票も可能なわけですし。

 

うなずける論説がありましたが、トランプはコロナに粛々と対応しつつ、経済的成果を押していけば2020年再選は固かったのではないか、という話です。実際、中産階級以下の人たちの雇用・経済状況は改善していたという話もあります。結果的にワクチンはかなりのスピードで開発が進んだのも事実ですし。(「ワープスピード作戦」という名前はいけていなかったのではないか、という指摘もまた頷けますが。)コロナやBLM問題対応が誠にお粗末に尽きた(マスクをなかなかしなかった・チャイナウイルスと呼び続けた・ファウチの言うこと聞かなかった・WHO脱退した・水際対策ほぼゼロ・ちなみにいまだに空港では水際対策やコンタクトトレーシングはできていません・していません!)ために、またバイデンの息子の疑惑をばかり攻撃したために、政権末期に向けて自壊・自爆したというのが個人的には頷けました。(討論会の1回目の舌戦でかなり多くの人が辟易していましたし、その後トランプ自身がコロナに罹患した&側近も罹患&それにも関わらずさっさとホワイトハウスに戻ったのも大きくマイナスでしたでしょう)

 

議事堂占拠の件は民主党はもとより、共和党や政党へ献金する大企業も強烈に嫌悪感を示しました。保守系ニュースでも流石にこれを支持する声はありませんでした。共和党が弱腰にトランプ批判をしないでいたら、企業が献金を引き上げると言って圧力をかけたのは大変に興味深い出来事でした。最近では、テック系の大企業は社内の有力なエンジニアを企業に押しとどめるためにも政治問題・社会問題や人種問題へのコメントも辞さないようになってきていますが、(このあたりは日本企業とは大きく一線を画するところです。セールスフォースドットコムのマーク・ベニオフのトレイルブレイザーという本にも詳しく書かれていますね。)

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 テック大手に留まらず、守旧派的な旧来の企業も同じように献金を引き上げたのが印象的でした。

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それくらい最後の最後の悪あがきはトランプの功績すらもダメにするものでした。議事堂占拠の翌日のラジオ局などでも様々な人が失望感を表明していました。

Twitter・FBアカウント凍結も仕方がない措置だったと思います。その後、ほかのSNS(パーラー)もAmazon AWSが取引を断ち切ったところからも、それがどれくらい、US社会の中でNGだったかは理解できるかと思います。民主主義にとって、民主主義を標榜し、率いてきたアメリカという国の根幹にかかわる議事堂であのような事件があり、それを現職の大統領がアジテーションした結果、引き起こしたというのは最大の「やってはいけない失敗」だったと思います。しかも、入り込んだ人たち4人以外に議会警察が1人死んでいるのもクリティカルな出来事です。

 

日本での報道ならびにネット論説を見ていると驚くほど多くの人がトランプ支持・バイデン反対だったということです。トランプはUSにしか興味が無く、日本にはさしたる興味もなかったにもかかわらず、です。トランプ在任中、反中発言が多かったからかもしれませんが、バイデン政権になっても議会の反中方針もあることから今後もアメリカは積極的に対中姿勢は続けるわけで。。。一体、トランプの何がそんなに日本人によかったのか、よくわかりませんでした。(さしたる利益も損も無かった)

アメリカの分断を象徴する陰謀論者が多数発生したのも興味深かったですが、日本にもこうした陰謀論を信じる人がたくさん出たのも面白い事例と思いました。US市民権もないのに。

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日本はトランプに戦闘機F35とか買わされたりもしているのに。。。(まあ、ネット論説だと右寄りの武装支持派が多いのかもしれませんね。)「世界の警察を辞めて、米国の利益のために動く」というトランプの行動や姿勢は常に二項対立なので大変に読みやすかった・わかりやすかったのである意味では人気があったのかもしれませんね。

 

ただ、今回のバイデンの得票数からすると、アメリカの知識階級の人は殆どが投票に行って、「もしも」が再び、起こるのを阻止したのではないでしょうか。それくらい、トランプ政権というのは嘘や決めつけが多く、人の話を聞かない政権だったと個人的には思います。(大きな戦争が無かった、などもちろん大変に良い面もあったと思うのですが、コロナでは多数のUS民が亡くなっており、やはり、USのEstablishmentからすると耐えがたい4年間だったのでは、と。)バイデンの就任式は州兵が動員されて物々しいものでしたが、The hill we climbという詩を黒人女性が朗読したのが絶賛されているところからも、USの知識階級層がどういう発言や振舞いを好むのか、政治家にどう振舞ってほしいかというのがよくわかる事例かなと思いました。

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USは移民の国であり、過去から今に至るまで原住民虐殺や黒人迫害の歴史があり、そうした歴史の流れを理解すると、どうしても分断を助長し、移民を排除する方向の動きばかりするトランプの手法は褒められたものではなかったと思いますし、人種のるつぼとも言われてきた移民の力がUSにもたらしてきた多くの経済的なBenefitを無視することはできないはずとも思います。(USに近年多くの付加価値をもたらしたAppleSteve Jobsも移民の子。MSの社長はインド人、Googleの社長もインド人、ジェフベゾスも移民の子。イーロン・マスクもそうでしょう)

 

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Establishmentや富裕層から無視され続けて、トランプがすくいあげようとしていた中西部の労働者階級の人たちからすれば、詩ではお腹は膨れないし、仕事にも就けないわけですが、それでも分断よりもUnited、UnityこそがUSAの精神であるべきであり、国内の分断を招いてきたトランプを否定する必要があったということなのかもしれません。分断を否定すればするほど、分断がより目立つという皮肉な話なのかもしれません。

 

バイデンの就任式の全文をまっさらな気持ちで読むと、いかにアメリカが2020年に追い詰まったのかがよく読み取れるかもしれません。

 

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長引くコロナ禍でUSの人たちは相当疲弊しているのは間違いありません。生活の困窮も目立ちホームレスも目に見える形で増えています。(テックワーカーはみんなWFHできるけど、レストランは閉じ、Uberなども利用者は減っている。)株だけが救いの神に見えるのか、人々は若者を中心にロビンフッドというアプリで株を売買していて、ひたすらに株高をけん引しています。コロナ対策が終われば、政府も補助はしなくなるでしょうから、そこから大きく経済も痛む可能性があります。

 

バイデンは既に相当高齢なので2期は無理と見られていますので、2024年がどうなるか、というところが今後の注目点になるでしょうが、それよりも前に果たして就任後100日のいわゆるハネムーン期間でどれくらいバイデン政権がうまくコロナを抑え込んでいけるかに掛かっているとは思います。ワクチン接種が思うように進んでいないのを加速できればよいのですが。