AIが変えるマーケティングとデスクトップリサーチ

生成系AIのChatGPTが登場し、一般的になって以降、マーケティングとデスクトップリサーチは大きく変化しつつある。今後はこの分野では、より戦略を考えるようなビジネスの核心に迫る部分が残っていくのだと思う。

まだ、ChatGPT3.5のレベルではそこまで大きなインパクトがない部分もあるにはある。

土方的な作業もまだ残るが、相当、AIで置き換えが可能そうだ。

非常に簡単な作業は既に置き換えが起こりつつあるといえる。

 

ChatGPTを使ってみて衝撃を受けた、という人の反応は正しいと思う。

私もマーケティングの世界に少しだけ足を踏み入れた人間として、このAIが何をどう変えるのかは日々ニュースで見聞きするレベルだけでも数えきれない程の情報が溢れている。

インターネットとスマートフォンの発達によって、世界には情報が溢れている、検索が困難になる、と言われてきて久しかったのに、さらにAIによって生成された情報が溢れるわけでこの流れが最後にどこに行き着くのかを考えると気が遠くなる。少なくとも、文系総合職と言われる人たちの仕事は徐々に収斂されていくことが予測できる。「データやAIを駆使した営業やマーケティングというのは「口で言うのは簡単だが、実現は難しい」と言うのがこれまでの下馬評だったわけだが、ChatGPTやMicrosoft Copilotが本格実装されるとこれは夢物語ではなくなる。マクロが不要になり、エクセルでデータを分析することが簡単になり、パッとみただけの数値の分析は出てくるだろう。パワーポイントはあっという間に作ることができる。最適な表現が思い浮かばなくてもWordであっという間に画面遷移なしに文章の推敲ができる未来がすぐそこまで来ている。この破壊力は想像を絶する。GPUを主業とするNVIDIAの株価は昨年の最安値比較で70%ほども上がっているが、ここまでの展開を予想していたわけではなかったということだろう。

Chat自体は誰でも使える自然言語だし、そこから出てくるアウトプットは既に情報入手のみであれば、検索を大きく越えそうだ。もちろん使っていて、思うのは内容の真偽を確かめるために検索もまだ必要だと言うことだが。ChatGPTをうまく使えない、というのは流石に恥ずかしい。自然言語で行うChatでアウトプットが容易に得られるので、これができない、というのはもはやパソコンに文字を打ち込むことができない、と言っているのに等しい。(意外とそういう人が多いのもまた、事実だが)

「質問する力が重要になる」、といろんな人が言っているのは半分正しくて、半分間違っている。生成系AIがここまで普及してくると、質問する力、というか、自然言語プログラミング言語のように操る力が必要不可欠になる。つまり論理的に自分の課題や欲しい答えを文章で構成する力である。論理性、語学力、ということになる。

「Garbage in, Garbage out」とはよく言われるが、正しいInputを入れなければ、欲しいOutputは出てこない。検索でもそれは同じだが、検索以上に言葉をきちんと順序よく、並べて質問ができないと、欲しい回答が得られない。また、英語によるInputの方が質の高いOutputを得られることを考えれば、英語は必要不可欠なスキルということになる。いちいち、質問文や回答文をGoogle翻訳やDeepLで翻訳するのも良いのだが、一足飛びに質問できる人の方がスピードが早いので累積での差が激しくなる一方だ。AIの発達で英語や会計の力は不要になる、と言われるが、英語を読み書きできる人材や会計に詳しい人材、プログラミングに関する人材は今後も中長期で価値が高いままだろう。

大規模言語モデルのようにスケールしたAIと競争してしまうとどうやったって人に勝ち目はないので、AIに代替されづらいスキルを身につけるか、AIを駆使して人よりも多くのアウトプットを出すことに集中した方が良さそうだ。

さて、実際にChatGPTを使ってみた、という記事は山ほどあるが、自分でもいろんな方向で試してみた。会社は幸運なことに、ChatGPT自体の利用を禁止にはしなかった。

プロンプトの紹介はここではしないが、マーケットリサーチには一定程度無料版でも使える。一方で、ガイドラインをしっかりとチームで定めておくことも重要そうだ。有料プランなどで情報の秘匿性が高まらないうちは、無料版利用時は会社の名前や人名はチャット欄には入れないほうが賢明だ。サムスンなどの会社でも問題になっている。

また、どちらかというと、学術系の調査などには向いていると感じる。例えば、学術的な基本知識、基礎知識的な質問をぶつけて、表にする、というのは非常に有用だろう。特に既に存在する自社にとっての新市場や新技術、新アプリケーションについて一般的な内容をさっと知りたい時、まとめたい時は非常に有用だろう。一方で、全く存在しない新しい市場やアプリケーションについて調べる際には注意が必要だろう。また、優劣比較、3C分析、4C分析、4P分析などにも有用だ。日本語だと一度にアウトプットできる文字数が足らなくなるが、英語ならSWOT分析あたりも有用だろう。もちろん、自分の会社の課題をあまり事細かに書いてしまうと、情報秘匿性の問題があるため、言い換え、書き換えが重要になる。そのままは入力すべきではないだろう。現段階の無料版で議事録作成をさせるのはもってのほかである。

この「表にする」、という機能はとにかく有用で、さまざまな課題を挙げておいて、表にしたり、要素を抽出したりするのにも大変便利だ。こうした機能を駆使すれば、デスクトップリサーチで死ぬほど時間がかかっていた人も多少これで時間を短縮することができそうだ。壁打ち役になってもらうのにもちょうど良い。昨年何度か深夜勤務でデスクトップリサーチしていたが、もし、昨年にもChatGPTがあれば、アウトプットの質も量も大きく変わっていただろう。

一方で、こうしたツールにアウトプットが左右される可能性もある。「重要な単語を事前にどれだけ質問文であるインプットに散りばめられるか」が、アウトプットの質そのものにも直接的に影響する。下手にChatGPTに固執すると、アウトプットの質は一定以上高まらない。随時不明な単語は検索を行い、セレンディピティ的な情報の収集も一定はまだ必要だろう。

 

昨年、取り組んでいる調査でたまたま知った情報が特許取得に繋がる着想に至った経験をした。1年くらいの調査の中でも視点や力点の置き方次第ではそうした着想にも至る。そのため、一見無駄に思える検索作業やバックグラウンド調査もまた必要不可欠なのだろう。また、自社の製品に向いているソリューションや技術がどういうものか、と言った一般的な質問も同じく手控えるべき質問なのだろう。よほど汎用的な商材でない限り。

また、キャッチコピーなどの検討でも様々な要素を考えさせて複数の候補を挙げさせるなども有用だろう。