【感想】日本大手企業によるシリコンバレー活用術セミナー (日本語講演)

去る2/19に開催されたセミナーとパネルディスカッションを見てきましたのでメモを残しておきます。

 

日時:2019/02/19(火) 5pm to 8pm at Palo Alto Mitchell Park Community Center

前半:Fenox Venture Capital CEO Anis Uzzamanによる講演

後半:大手日本企業CVC担当者4名によるパネルディスカッション

 

感想:

シリコンバレーで日本語を流暢に話せるアメリカ人による大手VCが日本の大手企業のCVC担当者と組んでファンドを組成し、長期にわたって成功事例をいくつも出しているのは興味深いと感じた。

 

・また、大手企業各社それぞれの状況に応じた投資が進んでおり、こうしたCVCの成功事例を比較して並べて聞ける機会はなかなか無いと思うので、貴重な機会だったと言える。

 

1. Fenox Venture Capital CEO Anis Uzzamanによる講演

お題目「日本大手企業向けシリコンバレー活用術セミナー」

 

■Fenoxの紹介

 Fenox Venture Capital は2011年設立。シリコンバレーを本拠地として全世界で25個のファンドを運用、投資先企業は140社以上、通常のVCの10倍程度の人員規模である90名体制で投資先企業と投資元企業のサポートを実施。

日本やシリコンバレーだけでなく、インドネシアイスラエルバングラディシュなどのアジア圏での投資活動も盛ん。全世界に7つの拠点と9か所のローカル対応できる人間がおり、合計16か国で活動。

日系や台湾系などを中心とした大企業33社と一緒に全世界のスタートアップを発掘中。

 

 Fenoxへの出資企業はセガサミーバンダイナムコアイシングループ双日日本経済新聞、Wistron、Disco、帝人、TBS、Nissha、CAC、ブラザーなど。Fenoxは台湾系企業とのつながりも強く、PegatronやASUSなどとスタートアップを繋ぐこともできる。シリコンバレーのスタートアップやVCからはFenoxをアジアへの窓口会社として見ているところもある。

また、Uzzaman氏は3年前から40か国3万社が参加するスタートアップワールドカップを立上げ、5月には3回目の世界大会も実施予定。日本やUS、インドネシアなど様々な地域からこのピッチ大会に参加し、ピッチで優勝した会社は投資1億円を受けられるイベント。https://www.startupworldcup.io/japan-regional 

 日本でも16社程度に投資し、上場した企業もある。日系大企業は新規事業投資をやりたいので、Fenoxとコンタクトして来るところが多い。

 

イノベーション活動における日本企業の5つの問題点

①明確な目的が定まらないまま自社のCVCを設立してしまう

②スタートアップの実情に詳しくない

③駐在員の人気が短く3年ごとに入れ替わるため継続性が無い。

④スタートアップのスピード感に追いついていけない

⑤ニッチな分野の大企業にスタートアップの数が足りていない

 

■上記の5つの問題点にFenoxと組めばどう対策を取れるか?

①明確な目的が定まらないまま自社のCVCを設立してしまう問題

2012年以降、日本でもCVCによる大企業のベンチャー投資は活発化してきた。代表例としては、KDDI、Yahoo、NTTドコモ楽天オムロンソニーパナソニック、などなど。投資活動は活発化しているが、PWCヒアリングした結果、運用から3年以上が経過した企業では回答者の45%が「まったく順調ではない」「あまり順調ではない」と回答している。成功事例も増えつつあるが、案件発掘やファンドの運用のノウハウが不足しており、悩みを抱える企業も多い。オープンイノベーションを加速させると言ったエコシステムが確立されているが、一方で、日本では投資のExit戦略まで明確になっているケースはあまりない。自社CVCの場合、下記の5つの悩みが散見される。

  1. 投資条件などの投資判断
  2. 優良案件の発掘
  3. 投資後のスタートアップのサポート・モニタリング
  4. 財務リターンが厳しい
  5. 事業シナジーが出ない。

CVCがうまくいかない主な理由は下記の3つ。

1. スタートアップのBusiness Developmentをサポートできない

 スタートアップが成長していくために、複数企業との事業提携が必要であるが、事業会社では他の事業会社との事業提携サポートは出来ない

 

2. 資金調達のサポートが出来ない

 スタートアップが資金調達を必要としているときに、事業会社が追加投資しないケースもある。他の事業会社に資金調達のサポートを依頼することも難しいため、資金調達がうまくいかず、スタートアップの成長が滞ることもある。2-3年で死んでしまう(つぶれてしまう)企業も非常に多い。

 

3. スタートアップのEXIT戦略のサポートが出来ない。

 スタートアップにとって適切なExit戦略や、事業会社からスタートアップへ潜在的なExit先への紹介が無ければ、スタートアップはExit出来ずに倒産してしまい、CVCを持つ大企業は投資元本を全て失ってしまう。

 CVCが単独で投資する場合、スタートアップに資金を投入したものの、その後に、投資先のスタートアップが活動を続けるうち、資金調達をうまく出来ず潰れてしまうスタートアップが非常に多い。そのため、Fenoxが日系大企業に今提案しているスキームでは、日本の大企業と投資先の間に入って、スタートアップの資金調達を手伝い、Exitのサポートまでしっかりやることでスタートアップがつぶれないようにしっかりサポートする。

 

②スタートアップの実情に詳しくない

4つの問題がある。

  1. スタートアップ独自の文化に詳しくない
  2. シリコンバレーのインナーサークルへのアクセスに限りがある
  3. シリコンバレーのトップレベルの発掘に限りがある
  4. 日本本社に発掘した案件を紹介しても提携に繋がらない

 シリコンバレーのTop Dealはたいてい、Inner Circle(内輪)のランチMTGなどであっという間に決まってしまうことが多く、そうしたTop Dealに日本企業が呼ばれることは殆ど無い。たとえば、世界でスタートアップの情報が多く入ってくるインナーサークルは大別して3つある。 

  1. Yコンビネーターや500startups、techstarsのようなインキュベーターアクセラレーター
  2. Kleiner PerkinsやGoogle Venturesのようなベンチャーキャピタル
  3. スタートアップネットワークを持つ法律事務所や、MITやStanford大学発の企業家組織、Bases,StartX、スタートアップワールドカップなどのイベンドでのネットワーク

 Yコンビネーターや世界で2番目の規模のtechstarsはたとえば、年1-2回デモデーを開催しているが、会場で100人以上の観客がいたが、参加したことがある人は2名程度だった。Yコンは様々なシードレベルのスタートアップが必ず門戸を叩くアクセラレーターだが、こうしたところに投資することで10億円の投資金額が700億円の時価総額になる事例もある。チケットでお金を払って入れるところにはピカピカのクオリティの高い案件は落っこちていない。

 

③駐在員の人気が短く3年ごとに入れ替わるため継続性が無い。

 日本の大手企業は人材育成の観点から、3年程度で担当滋賀新しいし部署へと移動になるケースが多い。スタートアップが成長するまでには3-5年程度の時間が必要だが、事業会社の担当者が変更になるとスタートアップへの継続的な支援が出来なくなる。スタートアップとの提携がうまくいかなくなることも多い。

 

 Fenoxは対策として、Fenoxが現地に擁するエキスパートを活用。事業会社側の担当者が変わっても、投資する担当者を変えないことで投資を受けるスタートアップ側から見たときの「顔」は変えないことが可能。また、投資元の大企業担当者にはFenoxのオフィスにも席を持ってもらったり、名刺を持ってもらったりすることも可能。

 

④スタートアップのスピード感に追いついていけない

 たとえば、Yコンの案件などは小額投資案件であることが多く、500-1000万円程度の場合があるが、プレゼンの後、投資決断までたったの48hしかないケースもある。スタートアップは日本大手企業のように一般的なルール通りに進まない。有名な投資家が投資したがる案件だと投資ラウンドが開いてからクローズするまで数日から数週間しかない。数億円の投資を即決する必要があるが、多くの日本大手企業にとっては困難。このため、スピードが遅くて投資・事業提携が思うように出来ない。

 

 対策としてFenoxは帝人インフォコムと過去にCVCを開始した際に学んだノウハウを他の日本の大企業とも横展開している。(帝人の了承も事前に得ている)CVCの投資意思決定の迅速かに向けて承認プロセス・条件を提案している。下記はその一例。Fenoxと一緒に取り組んでいる大企業32社は全て、帝人が過去に適用した承認プロセスをフォローすることでスムーズに対応できている。承認プロセスを迅速化しないとうまくいかないだろう。「他の日本の大企業もやっている」という話だと横展開が非常にスムーズ。こうした流れは加速しており、Fenoxが最近まとめた投資では110億円規模の投資を3hくらいで即決している事例もある。本来は大企業のTop層とワーキングレベルの両方から話が出るのが理想。Speed is the key to success.下記のテーブルは実際の承認プロセスの事例。数百万から1千万円は担当ベースで決められなければ何もできないだろう。

投資金額

承認者

意思決定期間

5000万円未満

担当窓口

1週間以内

5000万円-1億円未満

担当窓口⇒部長

2週間以内

1億円-3億円未満

担当窓口⇒部長⇒社長

4週間以内

3億円以上

担当窓口⇒部長⇒社長⇒ボード

6週間以内

 

⑤ニッチな分野の大企業にスタートアップの数が足りていない

 シリコンバレーは確かにAIやIoTなどの分野に偏ったスタートアップであり、Fenoxの提携先が得意とするニッチな分野やBtoBの分野でのスタートアップの数は絶対的に少ない。そのため、事業アイデアを一緒に考えて、スタートアップを立ち上げるようなアイデアソンを開いたりすることもある。また、帝人はインキュベーションやイノベーションセンター、ファンドの3つのプラットフォームを活用している。こうしたスキームで技術力・ビジネス力を持つベンチャー企業と効率的に連携し、競合企業に負けない体制を整えることができる。

 

■事例紹介 Innotech

 Innotechは電子部品商社だが、22億円程度の投資を既に実施している。Innotechの投資先にMIT出身の学生が立ち上げたオサロというディープラーニングで人間と同等の緻密且つ精密な動きが出来る産業機械のスタートアップがある。ピーター・ティールなども投資している会社だが、ここに投資する上でInnotechはオサロに条件を提示し、①デンソーのロボットを使い、②からあげを弁当箱に入れてみろ、という出資のための条件を提示した。6カ月ほどオサロは苦戦していたが、成功。2018年6月に東京ビッグサイトで開催された食品機械展示会 https://toyokeizai.net/articles/-/226498 で展示されて非常に話題を呼んだ。機械工学や電子工学をやってきた人にしか難しさがわからないかもしれないが、1個1個の形状が不均一で異なる、表面が凸凹したからあげをカメラとAIで認識して都度アームの開く間隔や掴む力を変えながら、からあげを潰さないように手でつまむように持ち上げて弁当箱に入れるのは至難の業。展示会の反響は非常に大きく、Innotechは22億円のうち、1億円しかオサロには投資していないが、オサロとはBusiness Developmentの上で日本や中国の代理店契約を結んでおり、60社以上から問い合わせが来ており、Innotechは1億円以上の事業投資対効果を得られたものと考える。

 

■事例紹介 CACホールディングス

 CACは日本の大手システムインテグレータ。22億円の投資を実施している。その中でもCACが投資した会社にAffectivaという感情を読み取るAIを研究開発している会社があり、感情認識AIでは世界Top Level。CACがFenoxを通じてAffectivaに投資するためには、当時Affectivaの資金調達を主導するシリコンバレーでも非常に厳しいVCで有名なKleiner PerkinsとMTGをしなければならなかったが、非常にテクニカルな内容を求められ、Fenoxとしても東工大出身のAnisでなければきっとMTGをうまくこなせなかっただろう。

 CACは投資後に、日本でも選挙中に投票後の有権者の画像からどういった感情を抱いているかを分析したりして話題になった。また、Affectiva自体はトランプ大統領の顔からどういう感情かを推測する分析をおこない話題になった。2020年には大手自動車メーカーでも自動車にこうした感情認識AIを搭載する予定。一流スタートアップへの投資が財務リターンだけでなく、実質的な事業投資・ビジネス展開にも繋がっていっている良い事例と言える。シリコンバレーのインナーサークルに入っていなければこうした質の高いスタートアップにシード投資をすることはまず出来ない。(こうしたスタートアップは後半の資金調達ラウンドになると投資家が殺到するので100億円積んでも投資出来ない)

 

■質疑応答

Q. Exitプランの話があったが、どういう形を想定していて、どういう形がベストだと思うか?

A. 大きく分けるとこのFenoxが展開しているCVC/VCスキームでは3通りのExitプランが想定される。

  ①既存Bizに繋げて1-2年で回収 社長クラスは早く実績化したい人が多くどうしてもこういう要求がある。

  ②近い将来に繋げる話で2-3年で回収

  ③遠い将来に繋げる話で5-10年で回収

  もちろん、ファンドとしてはマイナスにならないように工夫をこらす。

 たとえば、半年ごとに投資先のポートフォリオはしっかり精査・レビューしており、不要と判断した場合は第3社割り当て増資などでよそに売ることもある。こうした売却先でもFenoxはしっかりとネットワークを作っており、売却先に悩むことは無い。

 

Q.どういうMagicを使ってここまで成功したのか?(ベンチャー投資で有名な平氏からの質問)

A. 真面目に一生懸命やるということだと思う。大企業はしっかりみているので手は抜けない。

今のカスタマーをしっかり大事にすることで、評判も良くなり、自然と他の案件も手掛けられるようになったと考えている。あと、Diversityを維持していることも成功要因と考えている。

 

2. 大手日本企業CVC担当者4名によるパネルディスカッション

【パネリスト】 Fenoxと取組を進めている4名

セガサミーホールディングス(株)   清宮 俊久 氏

アイシン精機(株)          宇野 富士夫 氏

帝人グループのインフォコム(株)  松浦 修 氏

双日(株)               奈良原 久之 氏

 

【モデレーター】九州大学カリフォルニアオフィス 松尾 正人 氏

 

セガサミーの取組み状況

 元々、セガ自体は故・大川功氏のCSKが出資していた会社。大川功氏はセガアスキーへの出資で日本では元祖VC投資家としても知られてきた。(ドリームキャストで大損失を被ったセガに自腹で850億円を投入したこともあった)http://kigyoka.com/news/magazine/magazine_20130507_87.html 

 そうした背景もあり、セガサミーホールディングスとなった今でもベンチャー投資に関しては過去より自社で取り組んできた。セガはサラリーマン経営者が舵取りをして左前になってしまったが、サミーはオーナー経営者であり、セガサミーとなってからはホールディングス側では25本のファンドで中長期の財務リターンを狙い、セガサイドでは事業投資も進んでいる。

 セガサミーとしてはパチンコ・パチスロ、ゲーム・エンタメ、カジノ・リゾートが3本柱の事業。

 アニメ制作やゲーム製作、玩具やぬいぐるみ、あまり知られていないが国内ではシェア8割くらいあるダーツマシン、なども手掛けているグループ。トレーディングカード、過去にはプリクラ、ゲームセンター、バーチヤファイターなど様々なヒットがあった。PC、インターネット、携帯電話、さらにそれらを組み合わせたスマホの更に先のフィールドでのイノベーションを模索している。過去にはVRなどでは1991-1994あたりにセガVR機器やジョイポリスではアトラクションなども出したこともあったが市場に問うのが、早すぎたためにヒットしなかった。

 Fenoxはセガサミーとは品川区大崎の住友不動産ビルの中にコワーキングスペースTunnel Tokyoを立ち上げており、(https://tunnel-tokyo.jp/) 様々なイベントを開催している。Fenox Venture Capital も入居している。2018年8月からファンドを立ち上げている。

 

アイシン精機の取組み状況

 アイシン精機トヨタのグループ企業。11万人を擁し、売上年4兆円で世界6位の自動車部品メーカー。アイシン精機アイシンAWが中核企業。2018年3月に50億円のファンドをFenoxと設立。

 アイシンのファンド設立目的は財務リターンではなく事業リターン。アイシン精機とAWから1名ずつ出してFenoxに常駐。Fenoxはこれまでの1年間にアイシン精機に800社を紹介し、6社投資開始、2社は検討中。投資先はアイシン日本サイドで精査して、訪問。また、ポテンシャル事業投資は10社程度。AIスタートアップとしては非常に話題を呼んでいるVicariousにもアイシン精機は投資。イーロン・マスクやマーク・ザッカ―バーグ、ジェフ・ベゾスも投資している。Vicariousは計算論的神経科学を用いた機械学習のスタートアップ。

 アイシングループでは各技術部門が定期的にFenoxを訪問し、探索領域について意見交換をおこなうことで、日本本社内の耐性にシリコンバレーの文化を提供。また、さらにポテンシャルスタートアップを訪問するなど、スタートアップとの密なコミュニケーションをFenoxがサポートしている。また、スタートアップと事業提携について話を進め、投資に向けて調査を開始している。

 アイシン精機の宇野氏はこれまでずっとパテント畑の人だったが、ファンド運営に参画している。

 

帝人グループの取組み状況

 帝人インフォコム帝人グループのIT企業。2014年にCVCをFenoxと設立した。デジタルヘルスケアやデジタルコミック(めちゃコミ)、睡眠コーチアプリなどに投資をしている。22億円から投資スタート。既に50社ほど投資。その実績を見た帝人本体も2017年にCVCを設立し、デジタルヘルスケアや医療機器スタートアップやフードテック企業に投資している。フードテックの場合、スーパー大麦のおにぎりをファミマで販売したりするスタートアップにも投資している。インドネシアでもGnBを設立し、25社程度小額投資を幅広くおこなっている。

 

双日の取組み状況

 事業投資からスタートアップ投資にも投資先を拡大していく上で2019年1月にFenoxとCVCを設立。30億円強の資金。双日が抱える9つの分野の営業本部(自動車、エネルギー・社会インフラ、食品・アグリ、リテール・生活品、産業基盤・都市開発、金属・資源、航空産業・交通プロジェクト、機械・医療インフラ、化学)と一緒に何か出来るスタートアップを探索していく。たとえばフードテック、プラスチックのリサイクルとか。。を考えている。

 

 

■質疑応答

  1. なぜCVCなのか?

帝人)  :インフォコムは受託開発のSierだったが、社内ではイノベーションが起きづらかった。

今はオープンイノベーションを目指して取り組んでいる。

セガ)  :投資は短期と長期のバランスが重要だと考えている。

新しいエンタメを作っていきたいと考えている。セガ内部ではCVCとは呼んでいない。

(アイシン):車業界は100年に1回の大変革期。CASEなどが急速にトレンド化している。

この流れを打破していかなくてはならない。

トヨタグループ内部での開発にとどまらず、USのオフィスからの発信でCVCを進めた。

双日) :投資自体はこれまでも取り組んできたが、得意な部隊だけが反応。

そうでない部隊からの反応は無かった。

ベンチャー投資による投資回収が得意ではない事業部とどんどん結び付けていきたい。

 

Q.社内でCVCを作る時にどうしてうまくいったのか?

双日)  :社長がTop downで進めた

(アイシン):Topだけでは決められず、サンノゼサイドで日本側を説得。

理解を求めて全体の決裁を求めた。たとえば、アニス氏とアイシンの副社長を繋げたりした。

 

Q.自社でCVCをManageすることもできたのになぜFenoxと組んでいるのか?

帝人):CVCというスキームはシリコンバレーでは確立されている。

Fenoxは出資者側の意向を強く考慮してくれる。

財務Returnだけではないことを学んでいる。

セガ)   :25本のファンドがあるが、地域としてUS内でもシリコンバレーを元々カバーしていなかった。

一方でTop Tierのファンドは簡単には相手にしてくれなかった。

Fenoxはバランスが取れているので選んだ。

(アイシン):インナーサークルのコネクションに惹かれた

 

Q. Fenoxと組んで何がよかったか?

双日)   :CVCはファンドがあるので、新しい財布ができた!と営業側は大はしゃぎ。

セガ)    :ファンドリターンできたものもある。失敗ももちろんある。経営の関心・関与・コミットも高い。

(アイシン):①企業の紹介量はCVC時代と比べて、10倍。

         ②紹介される企業の質が高い

         ③既存事業の延長しか見てなかったが他も見た。

 

Q.どうやってFenoxと意識のすり合わせをするか?

双日)  :案件をたくさん紹介してもらうことがあるが、興味が無い場合ももちろんある。しかし、単にそう回答するのではなく、その理由をきちんと提示することでソーシングポイントを増やすこともする。

(アイシン):ファンド立ち上げる時に技術サイドで注力技術探索領域を6つほど作った。電動化、人工知能、情報通信、電子技術、産業技術、新技術サービス。アイシンHQから技術者や役員がシリコンバレーへ来るたびにFenoxとInputを実施。そして内容を日々細かくUpdateして共有する。

 

Q. Fenoxに机を置いていてる人たちは普段のやりとりでどう感じているか?

(アイシン):①スタートアップとの面談に参加できるのは有意義。ビジネスモデルも学べる。②タイムリーに漏れの無い情報を手に入れられる。Weekly MTGも実施。③密なコミュニケーションをFenox側と取れる。日本側からの興味レベルを伝える際にもFace to Faceの方が意思確認しやすい。          

帝人)     :Fenoxの内部の議論の視点が面白い。他の企業の興味もわかって非常に面白い。

 

Q.アメリカ駐在者でFenoxからの情報を日本にInputする上で苦労していることは?もしくは工夫は?

帝人)     :Fenoxの生の情報をそのまま日本に投げてたとしても反応が無いこともままある。そのため、ある種の簡易的な事業企画をするつもりで企画をすることが多い。全ての部署に興味を持ってもらいたいが、実際にはそうでもない。CVCに興味を持ってくれる部署をある種の「お客さん」として大事にしている。

(アイシン) :日本に展開するときはスタートアップのキー技術が何かを注視している。

  1. 特許を確認してきちんと技術的な強みを分析・把握する
  2. アイシン全体のキー技術とどう結びつけられるかを提案する
  3. 実際にシリコンバレーにアイシンサイドのキーマンを招いて肌でシリコンバレーの風を感じてもらい、意識改革する。味方を社内で増やすためにも訪問してもらうようにしている。