シリコンバレーでの幼児教育

 この手の記事で「シリコンバレー」という文字を使うのはある意味では煽情的であり、現地の人たちの間ではこのエリアのことをシリコンバレーとは呼ばずに「ベイエリア」「サウスベイ」と呼ぶことが多いというのは200%理解した上で、でも日本では「ベイエリア」や「サンノゼサンタクララ、クパチーノ」では伝わらないということを踏まえて、記事タイトルではシリコンバレー、という言葉を敢えて使っていることをご了承くださいませ。

 

 さて、以前の記事でも何度か触れているが、2018年3月から娘をモンテッソーリ教育を導入しているプリスクール入れている。モンテッソーリ教育自体は20世紀初頭から存在している。詳細は下記記事あたりが詳しい。日本にも1960年代には紹介されているそうだが、私は実は昨年まで知らなかった。。

sainou.or.jp

モンテッソーリ教育は特徴的な教具を使った感覚教育や自発性をとても大事にしている。下見では何軒かのプリスクールをみて回ったが、今、娘が通っているプリスクールを下見した際、子どもたちの動きが他のプリスクールとは違う、と感じたため、入学を決めた。

 

妻が教えてくれたのだけど、モンテッソーリ教育を受けられるプリスクールではAMIとAMSを実践してるところがある。AMIとAMSの違いについては以下のブログに記載があった。

 

AMIとAMSの違いについて

ameblo.jp

 

娘が通ってるプリスクールはAMI。

・AMIはtraditionalでオーセンティックな教育だそうで、初期のモンテッソーリ教育を貫徹しているとのこと。

・一方で、AMSは良いものは新しいものでも取り入れるという姿勢。

 

妻と下見をした範囲ではAMSを取り入れているプリスクールではモンテッソーリが重視する感覚教育で特徴的なworkに割く時間が短かったので、AMIを実践している今のプリスクールを選択した。

 

 費用面では私の勤務している会社での教育補助は3歳からしかもらえないため、100%自腹になる。非常に重い負担だが、これも投資と思って、1年間は頑張ることにしたのだが、アメリカのプリスクールは結構、高い。週3回、午前中のみ、でも600-700ドル/月程度は支払わなければならない。1年通えばもはや大学より高い。。。フルタイムになるとこれが1500ドル/月くらいまでになる…(!)流石にそこまでは難しい。

 シリコンバレーではその高すぎる家賃をある程度余裕を持って支払うために両親が共働きであることが多い。いや、シリコンバレーに限らず、アメリカでは親が共働きであることは普通だと思う。日本ほど主婦率は高くないように思う。

厚生労働省のデータでは年々日本の専業主婦世帯数は減少傾向にはあるが、それでも700万世帯程度はまだ日本では専業主婦世帯だという。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000118655.pdf

USでも25%程度は専業主婦率とのことだが・・。(いや、意外に高い。。)

  そんな仕事で日々、忙しい両親が子どもを預けるわけだが、フルタイムだとこれだけのお金がかかるとすると、本当に大変だ。 

 

プリスクールからも定期的にフィードバックがあったりもする。あと、様子を写真に撮ってくれて親専用のコミュニティサイトにUploadしてくれたりもする。このサイトでいろんな先生からのフィードバックコメントが得られたりもする。様々な分野で今、子どもがどの程度できるようになったのかが、到達度/達成度が一目でわかるようになっている。たとえば、掃除をするだとかおもちゃを片付けるだとかトイレを一人でする、とかそういう項目別になっている。ITが活かされていて、非常にシステマチックだ。また、先生とFace to Faceで面談があったりもする。(私も、この面談は1回参加したが、自分の子どもについて英語で話す…ってこと自体が普段あまり無く、結構緊張した。。。)

 

 数か月前の面談でのフィードバックではもっと英語をがんばってね、という厳しめのフィードバックが妻にあった。。。プリスクールでは勿論、英語で先生は喋るし、同じクラスの子どもたちも日本人以外の子の方が多い。厳しいフィードバックが出てくるまでは比較的のんびりと構えていたが、そんな話を聞いてからは意識的に家でも娘には英語で話しかけ、絵本を読むときも日本語の絵本を敢えて英語にして読んでみたりもした。朝、通勤前にプリスクールへ送る時にも車中で英語で話しかけたりもしてきた。それが功を奏したわけではなくて、、、だんだん娘も英語が上達してきてつい先日、一気に良いフィードバックをもらえた。子どもの能力はある日、突然目覚ましく成長するのだな、と最近実感する機会が多い。娘からwaterの発音について指摘を受けるまでになった苦笑。

 

 また、娘はこれまで絵を書こうとしてもずーっと線で絵を描き続けることしかできなかったが、ある朝突然、人の顔の輪郭を書けるようになっていた。どうして突然書けるようになったのか、が最初はわからなかったが、前の日に懸命に日本で買ってきた公文式で貼り絵で人の顔を貼っていたことやずーっとやっていた鉛筆で線を引く作業が多分、彼女の知能や能力の発達に繋がっているのかなあ、と思う。そういう瞬間に出会えるのは親としてはとても幸せだなあと思う。そして、成長の段階に応じて、ある時、子どもは爆発的に成長するし、そのタイミングをきちんと日々観察していることが大事なのだと学んでいる。

 

また、時たま親だけを対象に夕方からプリスクールの講堂で講演会があったりもする。(子どもは参加できない。。。ので両親で参加するなら子どもはどこかに預けなければならない・・・)私はいつも仕事でドタバタしていて、こうした講演会には行ったことが無かったが、今回は妻ではなく、私が行くことになった。 

 

講演会では女性の講師の方が「モンテッソーリ教育は学校だけではなくて、家庭でも実践していきましょう」というお題で色々と心がけを教えてくれた。20個ほどのテーマで話を展開してくれた。

ABC仕立てになっており、Aid to Life, Belonging、Consistency、Daily Life、Emulate、Facilitate、Graces & Coutesies、Humanity、Independence、Justice、Kinesthesia、Language、Montessori、Needs、Observation、Practical Life、Questions、Responsibility、Sensitive Periods、Tendenciesなどなどそれぞれの単語をテーマに家庭でどうやってモンテッソーリ教育を実践していくか、という話だった。

 

印象に残ったところを箇条書きで紹介する。

・子どもは3年ごとに大きく発達する、という話で0歳、3歳、6歳、9歳、12歳、15歳、18歳、21歳、24歳と歳を重ねることで発達していくという話もあり、子どもの発達に応じた接し方がとても重要という話がまずあった。

 

・Belonging

コミュニティへの帰属意識は段々と歳を重ねると生まれてくる。それは学校や友人とのコミュニティだったり、する。子どもにとっては親との関わりよりも重要になってくることもあるが、それが世界との関わりの始まりであるから見守ってほしい。

 

・Consistency

継続性はとても重要。親は家でも気をつけるべきポイント。教師のためにもなるし、結局、巡り巡って忙しい親自身のためにもなる。たとえば、家に帰宅したら靴をそろえて片付けなさい、だなんて四六時中子どもに対して言い募るのは面倒だし、シリコンバレーの忙しい親にとってはとてもストレスフルだけど、それを続けて子どもが自発的に出来るようになるまで続けることが大事だし、子どもとの信頼関係を構築することにも繋がる。簡単ではないが、こういうことが小さい頃から出来るようになる。

 

・Daily Life

子どもに歯磨きだとか水を自分で飲ませるだとか、お手伝いだとかさせれば間違えたり失敗は必ずする。親は子どもの発達をよーく観察して彼らが出来るはず、と思ったら彼らが失敗することを恐れずにやらせてみよう。食事の準備ですら、やっているうちにそのうちに覚える。子どもにも必ずLearning Curveがあるので、どういう作業や行動が好きかはまずは好きなものをやらせてみてほしい。その際には効率性は二の次。

 

・Emulate

子どもは親がやっていることを真似するし、他の親がやっている癖を見て学んで覚える。親は実は家の中でこそ気を付けなければいけない。机には座るな、とか子どもには言っていても自分がやってしまっていることはよくあるだろう。学校ではもちろん、そういうことはしないように指導するわけだけど。

 

・Facilitate

どう子どもをFacilitateするかはとても大切。より良い方法を子どもがするのに導けるように質問をしてみるのもよい。

 

・Graces & Coutesies

挨拶とかお礼を言えるように。親がきちんと他者への気遣いが出来ているかどうかをお店や図書館で、子どもは親の言動を注意深く見ている。他者への気付きが重要。たとえば、子どもが限られたおもちゃをシェアできるようになったりする。

 

・Independence

子どもはいずれは自立していく。自信を子供に与えられるように、自分勝手ではなくて、子どもが自分で決断できるような選択の機会を親が意識的に与えていくことが重要。

 

・Justice

子供にとっての世界は最初はとても小さい。しかし、今はどんなニュースや記事にもちいさな子どもでもスマホでアクセス出来てしまうし、アイデアが世界中にシェア出来てしまう。Technologyとどう付き合うか、という話でもあるが、子どもが大きくなってきたら子どもとはきちんと意見交換をし、善悪の判断や政治の話もしていかなければいけない。そうしたときに特定の話題を親が避けてはいけない。

 

・Language

これもまた大きなキーポイントだが、子どもは親の使っている言語を使うし、親に従う。ただ、子どもがプリスクールや学校で学んできた知らない子どバを使っていてもそれをとがめないでほしい。一つ以上の言葉を話せる、読める、書けるということは素晴らしいこと。

 

・Needs

子供というのは時に不要なものを欲しがったりもする。そして、こんにちの子どもは様々なことにさらされている。たとえば、スマホ(インターネット)が代表例になるが、そうしたTechnologyに子どもをどう触れさせていくかというのがポイント。子どもが欲しがるから、と言ってなんでも与え続けるのはNo Good。ただ、一切与えないというのもまたよろしくない。子ども自身が興味を持つ方向にどう導いていくか。

 

・Observation

観察する機会は大切にしてほしい。プリスクールでも子どもを参観する機会がある。そうした場所で起こるInteractionや全体の雰囲気をよく感じてほしい。子どもたちがすることにいちいち口出し・手出しはせずによく観察してほしい。また、子どもがどうやって問題に向き合っていくかを観察するのもまた素晴らしい機会だと思う。

 

・Sensitive Periods

物事の適切な順番やLanguageなどある時点で覚えていく時がある。そうしたタイミングを見逃さないでよく観察してほしい。

 

家庭で実践する、とは言っても何かしらの具体論というよりは、「こういう心持で根気強く継続的に取り組みましょう」という話だった。一口に具体論で出来る教育は無いし、日々、子どもは変化していくし、親も家庭も時間とともにどんどん変わって行くわけだから、不変のショートカット術や便利術などは無くて、ひたすら、ビジョンやフィロソフィーを持って子どもと接して観察して導いていくしかない、というのはまさにその通りだなと思わされた。

 

この講演後には講演者との質疑応答もあった。シリコンバレーに住む教育意識の高いであろう親たちが積極的に手を挙げてさまざまな質問しており、これがまた、とてもそれぞれの家庭での悩みであるとか、苦しみであるとか非常にどこの国であっても普遍的な話が共有されていた。子どもをよく観察して、自分でできることはさせてみて、そしてしつこく継続性をもって伝えていくことが大事であるという信念が通底していた。また、子どももまた親をTestしていることがあり、子どもはとても賢い。そのため、ニュートラルに穏やかにそうしたことを伝えていくのが重要。子どもは親が折れることを知れば、また同じことをするので、親にも粘り強さ・継続性が必要。

 

・彼らの話もまた、普遍的であるからこそ、面白いなあ、と感じた。

・あと、普段はあまり気にしてなかったが本当にいろんな人種の人がいるなあと感じた。積極的に質問している人はインド人のママが多かった。

・他にも父親が参加している家庭もいくつもあって、それもまたアメリカらしいなあ、と思った。

・子どもの教育について他の家の人の方針をオープンに聞く機会というのは実はあんまり無いよなあと思うと、こういう機会を大切にした方が良いのだろうなと思った。

 

こうした子どもの早期教育をどう進めていくのか、価値をどこに見出してお金をかけるのか?というのは親それぞれの価値観があるだろうし、私も最初はあまりにお金がかかるので卒倒しそうになって難色を示していたが、娘の英語であるとか、小さい頃から日々多様性に触れることが出来ることを考えて、娘には楽しんで取り組んでもらっている。多分、娘も最初は先生の言ってることがわからない期間も結構長かったのだとは思うが、彼女がこの多感な時期に色んなことを素直に受け止めて吸収していければ、それが何よりの娘へのgiftになるのだろうと思う。