シリコンバレー駐在で得たもの

 タイトルからすると、もう日本に帰ったの?という感じにも読めてしまうんですが・・・まだシリコンバレーにいます。まだまだ私は駐在中なわけですが、2014年10月にシリコンバレー駐在しはじめ、海外駐在営業マンとして活動し始めてから既におおよそ6年弱が経過しており、その間にもいろんなことを学んできました。

 2015年以降、だんだん、いい感じに結果も出ています。明確に自分が努力したことで結果が出ている案件は2017年以降、という感じでなかなか時間はかかりましたが・・・。

 自分がかかわるようになって、自分が担当しているセグメントの売上は3倍くらいに伸びていることがわかりました。利益ももちろん大きく貢献していることがわかりました。

 もちろん、この結果は1人で達成したことではないのですが、自分が気を付けてきたことや工夫したことをまとめたことは無くて、一度まとめてみようと思い、自分がどういうアプローチで仕事をしているかを改めて振り返ってみました。

 

 

f:id:kikidiary:20200523110224p:plain

 

大別して、5つに区分けしてみました。

  1. 異言語コミュニケーション
  2. 人脈づくり(社内外)
  3. 発信&行動しつづける
  4. プロジェクトマネジメント
  5. プロダクトマーケティング

 

 1. 異言語コミュニケーション

 シリコンバレー駐在ではもちろん、アメリカなので、英語を話しての営業活動が主体となっています。アメリカという国でそこまで営業活動をまじめにしたことが無かった私にとっては最初は面食らう毎日でした。セールスMTGでも緊張してうまく話せなかったり、顧客を訪問してもあまりきちんとプレゼンや話ができなかったり。。。2014年の10月に赴任して数か月、最初のうちに出張したり訪問したりしているとき、はっきり言って本当に聞き取れていませんでした。

 当時の上司も今の上司も帰国子女で英語はもちろんペラペラだったので、「おいおい、この激戦区にどういうレベルのやつを送ってきたんだよ!」と思ったと思うんですよね。。私は今でもペラペラには程遠いレベルではあります。。が、色々と気を付けていることはあるので、それを列挙しました。

  • 自分の意見ははっきり述べる。沈黙は金ではなく、同意とみなされる。
  • 意見を述べる時やプレゼンをするときには必ず結論・提案を先に、そのあとに理由を明確に述べる。(AはBである、なぜなら・・・的に。)
  • 本社から出てくる資料がダメなら自分で話しやすいように責任をもって再構成する。自分の言葉で話さない人を客は信用しない。会社の代表の意識を持つ。
  • Yes or Noをはっきりと。ただ、欧米でも逆に婉曲にオブラートに包まないといけないときはある。
  • だらだらと話さない。ポイントは的確に2ー3個に絞る。顧客の時間感覚は日本とは違う。アジアなら長時間でのMTGがOKでも欧米ではNGだったりする。
  • 自分がわからないことや略語はわかったふりをしない、そのままにしない。できれば、その場で確認する。後で確認できないこともある。意味がわかるまで聞く。
  • 物事を簡単に決めつけない。「人は見たいものを見て、聞きたいことしか聞かない。People see only what they want to see.」常に最悪を想定して、疑り深く探りを入れる。
  • プレゼン時にフォントサイズや字体はそろえる。専門用語や略語を並べすぎない。常に相手が自分が作った資料や説明を理解しているかどうかを確認しながら、説明する。自分は相手にとって外国人。
  • プレゼンは事前に時間を作って練習する。人に見てもらって疑問点を答えられるようにしておくとなお良い。事前に聞かれそうな質問については想定Q&Aを作っておく

 ちなみに、英語がなんとかよどみなく話せるようになったのは駐在し始めてから半年以上経って、自分ひとりで1時間以内に30ページくらいある内容のプレゼンをしなければならなくなった時でした。プレゼンをする日、私は顧客訪問まで自室にこもり、ひたすら、資料を見て話をして壁に向かって暗唱できるようになるまで資料を説明し続けました。今思えば、隣の部屋にいた奥さんは「一体なに!?」と思ったと思うのですが、私はそれまでは同行してくれていた先輩上司にめちゃめちゃ助けられていたんだなあ、ということも痛感したのでした。この練習をしてお客さんになんとか話をして、握手してお客さんの部屋を後にした時、なんとか、自分は自分の仕事をできるようになってきたのだなあ、と感じたのでした。当時、嫌ーな汗を随分かいた気がします。

 

2.人脈づくり(社内外)

 シリコンバレー駐在していて自分の目標を大きく達成するのを助けてくれたのはまさに人脈だったと思っています。いろんな人とお知り合いになれたし、紹介してもらえたし、紹介した気がします。誰かにお願いされなくても紹介したし、誰かにお願いされたらできるだけ頑張ってつなげようとしています。USベースのビジネスに好影響が出るようになったのはつい最近ですが、アジア含めれば、日本の駐在員人脈というのは得難いものがあるなあ、と本当に実感します。あと、社外だけでなくて、社内での人脈構築もかなり重要で、自分の駐在ライフを形作るものの一つだと感じています。

  • 人脈は作ろうと思って作れるものではない。気が付いたらできている無形の財産。
  • 信頼できる人の紹介で始まるBizは筋が良い。(信頼できる人のフィルターがあるし、紹介するときはそれなりに相手もBizがうまくいくかどうか気を遣ってから紹介してくれるので)
  • 「共通の困りごと」があると、話が弾む。駐在中は日本にいる時にはなかなか会えない人とも意外とすんなりと会えたりする。お互い、異国にいる日本人という共通点・困りごとが必ずある。(ex. 自分の失敗・成功事例をケーススタディとして相手に積極的に紹介するとよい)
  • KIT(Keep in touchが非常に重要で1か月に1、2回は連絡をしてみる。人脈は生モノ。放置していては腐る。定期的なメンテナンスが必要。
  • 相手と良好な関係を構築するならば、「この人は」と思う人に対してはGive & Give & Giveが望ましい。(短期的な見返りは望まない。=クレクレ君になってはいけない。)
  • 自分が気になること、興味があること、モノ、ヒト、について発信し続けるといいことがある。思い出してもらいやすいキャラ、アイコンを自分に設定しておくと良い。(「あ、そういえば、あの人はこういうことに興味があると言っていたなあ」とふと思い出してもらえて紹介してくれた人がさらに別の人を紹介してくれることがある)
  • 「情報を使って相手を動かす」ことを意識して相手に情報をGiveする(単なるGiverではあまり報われない)
  • 人脈は何も社外だけが重要ではない。豊富な社内人脈は自分を助けてくれることが多い。夢を語り合える仲間を作っておくことが重要。

  よく「Kikiは人脈が広い」、とか言われます。私を派遣した人に聞くと私を選んだ理由として、挙げていたのは「信用できるやつほど遠くに置いておくもんや」そして、「お前、人と仲良くなるの、得意やん」でした。実際のところ、そこまで私が自分にそういう自覚があったわけではないのですが、確かに楽しく仕事をしようとはしてきて、それはたぶん、元々は自分が極度の胃痛持ちだったことや、人との関係の軋轢に疲れやすい人間だったとうのが関係しているようには思います。そして、更に、極度の目立ちたがり屋なんですがそういう自分の気質が影響したのか、人と仲良くなっていくのを楽しめるようになったように思います。

 

3.発信・行動し続ける

 Give and TakeのGiveのほうの話にもなりますが・・・発信をし続けることでほしい情報が自然と入ってくるようになる、こともあります。

  • 意外と海外駐在員のキャリアパスキャリアプラン、ミッションなんてあいまい。
  • 「自分はこういうことがやりたい、こういうことをしている、こういうミッションだ」、と言い切れば、それが、その人の道になるということもよくあります。逆に、自分で切り開かなければ自分の歩く道は誰も用意してくれないのが駐在員の現実。
  • 自分がどうなりたいか、どうしたいか、何をしているかを自分で定義付けて、毎月、グローバルに発信し続けていれば、たまに思い出してもらえて、自分が何をしているかも思い出してもらえる。(社内的にも切れてはいけない関係の人とは少し億劫でもKITKeep in touchし続ける。)もし、情報がもらえないなら、取りに行く。もらえるまで口を開けて待っていてはいけない。そして配る。本社が自分のことをどう見ているか、というReputationとリスク管理は超重要。駐在環境を居心地良くするのも悪くするのも自分次第。うまくManageできなければ不完全燃焼で帰国する羽目になる。(大体、本社の人たちは駐在員のことなんて、報告が必要な時に報告が無いだけで、自分にとっては重要ではない、みたいなことは平気で言ったりするので。)
  • 日々仕事をしている中で「これは問題だ」と思ったことは「どういう点がどう問題で、変えるとどんな良いことがあるか」を整理してまとめて発信してみる。変えるためのハードル・難易度の把握とそのために周りをどう巻き込んでいくかは非常に重要。「人を巻き込み、動かす。」厳しいことを言えば、「(自分は言ったのに)誰かが動いてくれない」というのは大抵、相手や組織を得心させて動かせていないのが原因。自分にとって本当に重要なことなら相手を動かして変えていく。自分の目的のために時には役員クラスに上申することも厭わない発信力・行動力は自分自身の道を切り開くのに重要。あと、「あいつは口だけ」という「言うだけ番長」にならないためには行動と発信がセットで必要。(行動しても発信しなければ、誰にも知られない・評価されない)たとえば、部長や役員と直接面談して、自分の担当領域のUpdateをしたい、と申し込めば拒む人はあまりいない。予定さえ合えば社長にすら会うことは可能。
  • 海外駐在すると、「ピッチャー、キャッチャー問題」などとよくいうが、(よく言われるのは自分がピッチャーで本社にキャッチャーがいない問題)実際には自分で受けたボールを自分でドリブルしてパスして自分でゴールまでけりこむくらいの他の人からするとちょっとうざいくらいの暑さの情熱が入っていないBizは大体うまくいかない。一人サッカー。でも、孤独にサッカーしていてもうまくいかないので自分のことを応援してくれるサポーターやパトロンはきちんと見つける。

 

4.プロジェクトマネジメント/チームリーディング

 2016年ー2017年頃に自分が弱いと指摘されたアカウントマネジメント・プロジェクトマネジメント、そしてチームリーディング。これは指摘された後、自分が本当に何をどうすればよくなるか、まるでわからなくて、何を自分がすべきかをわかるのに結構時間がかかりました。わざわざいろんな本を借りてきて読んだりもしました。人が動きたくなるときってどういうとき?というのを色々と研究しました。結局、魔法は無くて、地道にやり続けるしかない、というのが個人的な結論ではあります。面倒でもコツコツやり続ける以外に高い目標を達成する方法はなさそうです。

www.php.co.jp

  • 情報の中心地にいるように心がける。
  • 機能材営業は情報戦。思い込みで動くべからず。裏取り大事。周辺業者、客を巻き込んで情報の中心地にいるようにする。誰が本当の意思決定権者なのか、潮の変わり目を読む力が必要。競合を低く見積もるべからず。常に最強の敵と戦っているつもりで。油断しない。
  • 顧客特有のお作法を知る。社内の共通理解にする。
  • 社内用語や、コミュニケーションツールのローカルルールとか評価スケジュールや評価イベント名とか、特定試作イベント以降はもうチャンス無いとか。困り事が無ければ途中での材料変更は難しい、とか。一度Bizを失うと、どんなにチャンスが来てもほとんど取り返せない。現行品最強。お客さんは変更が嫌い。
  • お客が敷いた仕組み・ルールをどう利用するか?をよく考える。Bizの重要性と仕組みを理解できる仲間・同志を社内に増やす。
  • キーマンを掴む。キーマンからの問い合わせは最優先で対応。お客が製品のことを知らないからと言って、お客を侮らない。「わかっているだろう」、とか「これくらいわかるだろう」とか、そういう打算はしない。必ず発信・発言。わかってもらうまで説明する。略語を使わない。何度もFtoFで話をする。小さな疑問も拾って対応し、打合せの回数を意識的に増やして信頼関係構築。キーマンから信頼を得ることにより、スムーズに打合せや情報の出し入れが出来る。夢に出るくらい顔を覚えてもらうことを目指す。
  • 最後の一押しまで自分でやる。人任せにしない。妥協しない。妥協すると後悔する。
  • 情報共有・現状認識そろえる・アクションアイテム管理
  • 強引にでもリスク情報を社内共有して、社内を無理にでも動かす必要がある。そのためには忙しくても短時間でもテレカン設定して全員の認識をそろえる必要がある。日本側の力も最大限借りて動いてもらう。難しいことも厭わずやる。(やってもらう)
  • チームミーティングでは心理的安全性を高めるための発言を心掛ける。情報共有MTGでは雰囲気づくりが重要。自分から話してもいいんだ、失敗しても前のめりの失敗は認めあう雰囲気づくりがとても重要。人を責めない。起きたことを防ぐための前向きになれる振り返りをする。
  • 社内を動かすときにはスケジュール感やリスクの大小、インパクトを見える化してわかりやすく伝える。リーディングとPMの不在はプロジェクトをとん挫させる。誰がなにをすべきか、わかりやすい発信が重要。
  • リスク情報を勘案して、対策の要否をよくチームで議論し続けることが大事。誰が何をするのかを短時間で決めて次にどうするかも決めてどんどん回していくことで競合参入のリスク拡大・台頭を防ぐ。リスクはしつこいくらい徹底的に消し込む。足元の状況を過信しない。負けるときは理由がある。
  • アジアの情報がUSにタイムリーに入ってこないと立ち行かないことが多いので、情報のパスは海外法人同士でもきちんと作る。
  • これは忘れてはいけないことだが、相当のコストと手間と情熱をかけても案件が消滅・逸失することはある。(私は必死に日本までお客を追いかけていってついに自社品に決めてもらえた最後の一押しをした数日後にプロジェクトが消滅する、という憂き目に遭ったことがあります。。。)

 

5.プロダクトマーケティング

 結構自分の本業と言いますか、私の普段のセールス活動を知らない社内の人にはよく「Kikiさんはマーケティング畑の人だから」とか言われたり思われたりしています。いや、それ自体はそれでいいです。積極的に発信しているし、そう思ってもらえているので。ただ、自分は駐在し始めた後、アカウントマネジメント、プロジェクトマネジメント、チームリーディングなどもかなり必死にやってきたところはあるので、マーケティングだけの人と思われると、それはちょっと見せ方をもっと変えていかないといけないなあ、とは思ってしまいますね。プロダクトマーケティングで気を付けていることはとにかく労を惜しまず、自分でできることを自分のために、そして仲間のためにやることですね。

  • 「担当製品 x 担当顧客 x 担当市場」で社内の第一人者を自任・自称できるくらいになる。
  • 市場が伸びるか、顧客が伸びるか、案件が伸びるか、製品が売り込めるかをきちんと分析して、腑に落ちる案件を深掘りする。
  • 「少なくとも社内には自分より詳しい人はいない」、とうぬぼれではなく思えるくらいに調べて発信する。巻き込む。理想は社内外に語り合える仲間を作る。
  • 時には製品を分解したり、講演を聞きに行ったり、業界サイトで情報取り続けたりして「業界のプロ」「この人に聞けば大体なんでもわかる」と思ってもらえる人になるための行動を続ける。しつこく続ける。一度資料作って終わりではない。
  • 仮説立案と検証のサイクルをどれだけ素早く回せるか、何回打席に立てるかが重要。
  • 普段から、仮説を立てることを癖付け、人と議論してみる。巻き込む。
  • 仮説立案・構築する人が検証もするか、仮説検証をすることをアウトソースする場合はきちんと動機付けできるような役割分担・報酬にしなければ、人は動かない。(仮説検証は時間がかかるので)
  • 仮説を立案した人が積極的に関わっていかないと長続きしない。
  • 製品が決まっていない場合や採用事例が無い場合にはまず、製品開発部署などと協力して採用される仮説づくり、提案資料作り、DRなども必要。
  • ただ、漫然と情報(Information)を集めるのが仕事ではない。仮説を立てて情報を集めてその仮説を検証して確度を高めていくのが仕事。整理された良質なInformationをもとに考察を重ねた深みのあるIntelligenceだけが、投資の意思決定の重要な判断材料になる。(仮説検証ステージではヒトモノカネを投入することになるので戦略投資やスタートアップへの投資と変わらない程度にはコストを使うことになる。(目には見えないが)
  • 世界の変化のスピードは速い。仮説立案検証にのんびり時間をかけていては投資判断が遅れる。

 

以上のように、人生初の海外駐在・シリコンバレー駐在で自分が気を付けてきたこと、培ってきたことを文書化してみました。どっちかというと、仕事で気を付けるTipsみたいになっていて、読み直すとちょっと説教臭いのですが、こういう内容を学んできたことを自分なりに振り返っておければという自分なりの備忘録も兼ねています。

こういう自分をさらに超えていけるようになっていかなくてはいけないな、と思うので、こうした振り返りはまた定期的にやっていければと思っています。

 

ここまで読んでくださった奇特な方、本当にありがとうございました!