JETRO主催「今後のイノベーションを考える」第4回

JETRO主催「今後のイノベーションを考える」第4回

 

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坪田:前回同様、シリコンバレーでの事業会社の皆さんからの成功体験や仕組みづくりについて伺ったが、今回も事業会社から西城さんと佐藤さんに来てもらっている。今回は事業会社においてスターがどういう心持ちで事業開発に挑んできたのか、どういうアプローチに取り組んできたかを伺っていきたい。WiLの伊佐山さんにはどうやったら日本企業がより活躍していけるかについてのアドバイスを伺っていきたい。

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坪田:まずは、西城さんに伺いたいが、シリコンバレーに駐在した方たちの間でスターだったと思うが、どういうきっかけでシリコンバレー駐在したのか。

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西城中年の星みたいでちょっと嫌だが。。。当時、いいものを作ることで日本企業は成長してきたが、これからの非連続成長の世界の中でヤマハ発動機はどうシリコンバレーを活用できるか、何かやれるのではないか、という形で始まった。当時の常務が発案した。楽器の会社からスピンオフして発動機の会社として成長してきたが、3つ目のヤマハを作ろう、シリコンバレーにも貢献していこう、というテーマで取りくんでいこうというのが当初あったコンセプト。どうやってアプローチするのか、というところか、はスタンフォード大学の櫛田さんやWiLの伊佐山さんにもアドバイスを聞きながら取り組んでいた。ワーストプラクティスは櫛田さんがよく話しているが、ベストプラクティスはなかなかない。誰も書いていない。事業会社では各社ともにPain Pointが違う。トライ&エラーの繰り返しだった。モトボットという人目を集めるプロジェクトに取り組んでいたことと日経ビジネスに取り上げてもらったことを見てもらっただけ。活躍しているわけではない。行動はしていたとは思うが。

坪田:成果について教えてほしい。

西城:ロボティクスという技術と若い世代、デジタルネイティブが持っている価値観、価値にオリエントしている世代。ヤマハ発動機はRVやオートバイでは強いが、シリコンバレーでロボティクスの機会を得るためにはイメージも重要。モトボットのようなわかりやすいテーマが出てきた。事業というよりはまず、技術と人々がエキサイトするプログラムを作り、ブランディングに活用することが出来た。3年間という期間が決められていた。SRIインターナショナルというMenlo Parkにあるエンジニアリング集団と組むことにして、様々な刺激をもらいながらジョイントプロジェクトに取り組むことが出来た。

坪田:簡単そうなのだが、駐在員3年周期問題などもあるが、たった3年でシリコンバレーを代表するSRIと組んだり、本社を巻き込んでプロジェクトを進めたりしていて、西城さんでなければできなかったのでは。西城さんの強さや良さはどういうところで活きたか。

西城:身も蓋も無いが、運ではないか。ただ、ストーリーメイキングはしっかりやった。定性的な話をどうやって共感してもらえるシナリオにするか、というところは作りこんだ。中長期を見据えたストーリーを作ってステークホルダーが支援したくなるコミュニティみたいなものは作れたかもしれない。

坪田:TRIに移った今はどういったビジョンや世界観を創ろうとしているか。

西城ヤマハからの移籍でもただ自分が一緒に組むパートナーが変わっただけでやっていることは変わっていない。ヤマハから変わらず、世界や世の中をカラフルにしようとしている。人間や社会としての成熟を目指す。ビッグフィッシュでなければやらないというのではなく、色んな色がある世界をつくるプロセス、コミュニティを作っていく。いろんな人が自己実現できる世界を作っていくのが自分のビジョン。TRIと今は組んで価値創造をしていっている。

 

坪田:駐在して1年でCVC立ち上げて45憶円くらいを会社に投資させた佐藤さんもすごい実績だが。

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佐藤:まだ何も成し遂げていない・・・。赴任前後で鍵があったとは思う。

1つ目は赴任する前にインターネットで調べると、シリコンバレーで日本企業の意思決定スピードが遅くてバカにされているということを知った。アメリカ企業を圧倒する、という思いがあった。シリコンバレーに対して対等のスタンスで入れたのが良かった。AIとかデータエコノミーや投資の知識は全くなかった。US駐在前にインドに3年間駐在したことがあるのだが、人間の本質は変わらないという学びがあった。

2つ目は目的が当時あやふやだった。赴任前に当時の上司にアポを取って、話をして目的を聞くと、上司は「正直、ターゲットも何も決めていなかった」。ただ、いくつか条件を出された

・日本の本社からの表敬訪問の受け入れは全部禁止しろ、意思決定しに来るならOKにしろ、と言われた。ツアコンダメ絶対

・あと、シリコンバレーの日本人ムラに入るのは禁止シリコンバレームラで何かをかぎ取ってくるのがミッションというお達しがでた。

赴任して西城さんの話を聞いて、ピッチに立ったりしてレポートを作って本社に送るが、本社からの反応も返信も無かった。シリコンバレーはすごい情報量だが、情報の海におぼれていくことになった。

 スタートアップに実際に訪問して渾身のパワーポイントで説明して、一緒にやろうという話をするのだが、プレゼン中に1人また1人と抜けていって若手1人くらいしか残っていない。「どうして、みんな出ていったのか」と聞いたが、例えば、「佐藤さんは47か国のネットワークで一緒に成長しようと言うが、どれくらいベトナムでスケールできるのか、説明できるか?」とか細かい話を聞かれると何も説明できなかった。これは良い失敗だった。

坪田:「日本人ムラに入らない」というのは難しいテーマだったのでは?

西城:だから一緒に飲みに行ってくれなかったのね。

佐藤:苦笑。

坪田:当時、素早く日本人ムラに入らずにどうやってローカルなネットワークを作り上げたのか。

佐藤:会社が唯一くれた武器がネットサービスベンチャーズへのLP出資だった。http://nsv.com/japan/

ここのお二人に色々教えてもらえた。初代駐在員には水先案内人は絶対に必要では。大企業は帰納法での考察が求められるが、未来のことを演繹法的アプローチで考える必要がある。ただ、ほとんどの人には根拠がない。第3者の意見やアドバイスは本当に重要。赴任して1か月でスタートアップを回り始めたとき、ネットサービスベンチャーズにアドバイスを聞いたが、まずは「筋トレ」をしろと言われた。スタートアップ企業について簡潔にスライド1枚にまとめろという話をやらされた。途中で面倒になって1か月後に「まだ2社しかしていない」と言ったらネットサービスベンチャーズの普段はものすごく温厚な校條さんに顔を真っ赤にしてものすごく怒られた。慌ててその後取り組んだが、スライドでエッセンスをまとめる工夫を学んだ。シリコンバレーのエコシステムの中心にはスタートアップ投資というのがある、というのがわかり、自分でやりたいと思い、CVCを立ち上げた。スピードを上げて投資していけばネットワークが広がっていった。

坪田:伊佐山さんは日本企業に対しての取り組みでどういう思いで取り組まれているか。

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伊佐山:西城さんや佐藤さんと同じように日本の大企業のサラリーマンをやっていた。シリコンバレーにきて10年経ち、日本に役立つ技術を探したり、日本企業にシリコンバレーの文化を注入したいということを考えてきた。駐在員3年周期問題とかもあって、同じ詐欺師にみんな騙されるし、どういう風に落とし穴に落ちずに戦えるか、ということを校條さんみたいな方に巡り合えたらよいが。。。自分も水先案内人になることで日本企業にとってのJTBになれればと思った。水先案内人としての価値は貴重だと思った。駐在員が赴任直後に落ちるべきではない落とし穴に落ちずに本質的な活動に注力できるように役立ちたいと思ったのがそもそもの経緯。

シリコンバレーでどういうキャラだと活躍できるか?という話だが、成功する起業家はどういう話と一緒で成功する駐在員には4つ横文字の特徴がある。

 

  • メガロマニア

自信過剰で目立ちたがりのうざい人。過大評価してるくらいの人。メガロマニアは自分を実態より大きく見せないといけない。

常に周りに意識がいっていて、メタ認知。いかに自分と周りを相対化して認識できるかという能力。シリコンバレーはみんないつ技術を盗まれるかわからないが、パラノイア

  • グローバル

多様性。シリコンバレーに来たからこそ、色んな自分が知らない人と組んで何をやるかという話

  • Humanity

愛嬌。外国人と社交した時に「面白い」と思ってもらえるキャラクター性があるかどうか。歴史に詳しいとかスポーツに詳しいとか、動きがはっちゃけているとか。ただ、自分がすごいと言っているだけでは通用しない。

 

日本人は大企業の組織内で普段はこういう特質を抑えている。新入社員の頃にはそういうキャラだった人も中間管理職になるにつれて角が取れて丸くなってしまう。この4つの特質は成功する起業家の特性と変わらない。こいつ面白いとか思われないと誰も話を聞いてくれなくて佐藤さんが経験したように、プレゼンの間に聴衆が1人2人といなくなってしまう。運が良かったと西城さんはさっき言ったが、運は偶然では起こらない。チャンスの神様が前を通り過ぎたときにパッとつかめる人は準備ができている人。どういう人が運が良いか?そういう研究もある。外交的かつ社交的な人でなければシリコンバレーではつらい。

 

坪田:企業における駐在員の活躍の定義とは?

伊佐山:ミッション次第。技術探索や投資とかミッションは人それぞれ。シリコンバレーの風を本社に届けられる人というのが成功と言えるのでは。企業文化はそうそうには変わらない。世の中の不確実性が高まる中で、Bizに勝つために失敗できる環境をまず作り、人事制度や職場環境を変え予算も考えて、、、ということをトップダウンで組織的な意識改革にまで結び付ける必要がある。シリコンバレーに行けばミラクルが起こるというのは他人事。せっかくシリコンバレーに人を置くのであれば、どうやってシリコンバレーを活用するか、デジタルトランスフォーメーションに活かすとか、本社全体を変えるというところまで本社に根回しして社長や役員をうまく転がして会社を変えようという意識を高めていく必要がある。個人がすごくても全くワークしないが。社長の理解があるとか、シリコンバレー駐在員が根回し上手とかいろんな要素が必要。せっかくなので、シリコンバレーにいる日本企業はそういうことを目指してほしい。

坪田:必ずしも素晴らしい駐在員がいても物事が大きく進むわけではないと思うが、うまくいっているときには駐在員の活躍があるとは思っている。

西城:郷に入っては郷に従えではないか。今までの当たり前を変えて動く。何も変えないのはもったいない。いきなり佐藤さんみたいにスタートアップの前でピッチするとかそんな大変なことが出来る人ばかりではない。例えば、ミーティングに集団でなく1人で行く、とか。1人で行くと、自分でいろんな領域を話せるようにしておかないといけない。できるだけ広いカバレッジをもって代表としていく。とか。会社名ではなく名前を先にするとか、名刺を会議の最後に出すとか。日本にいるときとの行動変容が違いを生み出す。典型的な日本人の動き方を変えられたら興味を持ってもらえるかもしれないし、そうなればラッキー。今までと扱いが変わるともっと自分を変えていこうと動けるようになる。

坪田:佐藤さんは西城さんとはエピソードがあるとか。

佐藤:1号ファンドを40Mil USDで立ち上げて3年間で使おうというコミットはあったが、半年でつかった。2号ファンドを作る必要に迫られて色んな本社役員にメリットを説明していったが、とあるグループ会社のトップが2号ファンドに懸念を示していた。表敬訪問禁止なので、来てもらった役員には意思決定はしてきてもらった。シリコンバレーにまだ来てもらっていなかった人だったのだが、その役員には来てもらうことになった。自分が話すと空回りする心配があったのでシリコンバレーに来てもらい、西城さんに話をしてもらうことになった。前打ち合わせしていたのに、西城さんは全く前打ち合わせとは違う話をしてすごい焦ったが、結果的に西城さんの言葉や思いをぶつけてもらって、2号ファンドも立ち上がり、120Mil USDになった。

西城:前打ち合わせ通りに話せるわけないよね。。

 

坪田:移籍の真相について、初代で圧倒的なスピード感で圧倒的な成果を残した西城さんの後任はどうやって作るのか?

西城:私は駐在員だったので有限だった。シリコンバレーで起きていることを日本の中で取り込んで会社として進化して成長の道筋をつけるためにはいろんな選択肢があった。シリコンバレーには人についてくる、という文化・課題はあるが、自分は5年くらいが駐在期限の限界とは思っていた。まずは文化を作るという意味でローカル人材を活用するとか、社会課題を解決する事業とかロボティクスとかそういうテーマ設定はできた。ヤマハモーターベンチャーズを作り上げる中で100M USDのファンドを作ったり、意義を理解してもらったり、と下地作りはできた。後任人事は自分では決められないとは思った。第二フェーズは礎を作ったうえでの展開。べき論ではなく、意思決定者に適切な判断をしてもらうために提案をしてきた。後任についてはあまり提案しなかった。

坪田シリコンバレーで西城さんが人を育てるという面で気にしていた部分は。

西城:投資をしてみて思ったのはすべては人。戦略を作るとか、ではなく、行動やコミュニケーションで決まる。ヤマハのファンドはアーリーステージ向けファンドなので、人を見てチームを見てリスクや限界を理解できているか、とか。人を見るプロにはなれる。技術はどのスタートアップもそれぞれ違うのですべては理解しきれないが、人はみることができる。文化や技術を作るのは人。CuriosityとOwnershipが重要。何かを見たときに面白いと思える発想、会社の話だけど自分事として取り組んでいく、という2つの気持ちが重要だと思っている。

 

坪田:人を育てる上で仕組みづくりという面や設計で佐藤さんが取り組んでいるガレージプログラムについて教えてほしい。

佐藤:スタートアップに話を聞いてもらえなかった苦い経験から来ている。47か国の拠点でそれぞれ苦しんでいる拠点があり、各拠点の人たちにシリコンバレーに来てもらって課題解決をする取り組み。明確なPain Pointが無ければ断る。事前に来る前にもPain Pointがしっかりはっきりしている人たちに来てもらって話をしてくが、大体はPain Pointは間違っているということが分かった。課題解決型で来てもらっているが、課題再定義型のアプローチのようになって帰国する人たちが多い。日系企業シリコンバレー駐在員は現業の深掘りもDisruptiveな課題再定義も深掘りが必要で両方しっかりすることで人材育成につながる。40人くらいにこれまで来てもらっている。帰国者たち同士でつながって更にアルムナイの会を設定し、草の根的な人材育成をしてきている。当事者として取り組むことが重要。

 

坪田:日本企業のこれからを担う世代や経営者にとってシリコンバレーで研修する意義は。

伊佐山:何のために来るのか、という目的によっても変わる。日本企業にはシリコンバレー的な立ち上げは合わない。脱藩のコストが高い。アメリカは個人技で人脈やスキルをポータブルで持ち運びする。日本は長く、働きがち。企業内起業家を増やすのが重要。どういう状況で人が変わるか、起業家精神を持った人に変わるためには。。。

  • 外部環境を変える

失敗には寛容だし、能天気な国がカリフォルニア。明日が来るさと考えられる環境にいるのはリスクテイカーにはとても大事。日本はジメジメしてどんよりしている。

  • 付き合う人を変える
    日本人は同じ課の中でしか飯を食わなかったりもする。シリコンバレーにはいろんな人が働いてる。ほかの会社、組織の人と話す。Biz関係ない人と会うと面白い。学校の先生とか。自分の業界だけではなく、ほかの業界とも意識的に付き合うことで人が変わっていく。Biz関係の人も集まり勝ち。年寄とも若手も仲良くなると、いろんな人が話を聞いてくれるようになる。
  • 自分自身に等価交換できる価値がないと全く相手にされない。

教えてくださいばかりだと話にならない。自分で勉強して、相手にも会いたい、面白いと思ってもらえるのが重要。相手が何を欲しがっているかを根回しして準備するとか。等価交換、一期一会の思いで取り組んでほしい。ぶっつけ本番でノリでやればいいという話ではない。自分が価値が高いものを発信していけば高めあうこともできる。

 

シリコンバレーはこの3つを求めるにはすごい便利。日本人サポートもある。

技術やベンチャーを紹介するだけでなく、WiL的にはそういう人をどう育てるかなども重要な点。国や政府を巻き込んだりもしている。事業会社を巻き込むだけでなく、日本人は上のものに巻かれ系ではあり権威に弱かったりもする。日本を変える勢いでやるような気持ちで取り組んでいる。毎年そういう人が100人200人出てくることで社会は変わっていくはず。小さな成功を増やしていく環境をどうやって作るか。イノベイターをだんだん増やすためにどうするか。ただ、短期的にシリコンバレーのスタートアップに投資するだけでなく、どうやって社内文化作りするか。

坪田:一つ触れられていなかった話題だが、多様性について。日本人は日本人で固まりがち。今回の登壇者を鑑みても年齢層や性別を鑑みても偏っている。日本とUSとでは大いに違う。。カラフルさが組織や日本企業から無くなったときのリスクは何か?

西城:これも役割分担だと思っている。世の中をカラフルにしたいし、カラフルな世の中が社会に実装されてほしいと思ったのでヤマハからTRIに移った。これから先の未来を考えるともっと人間の生き方も多様性が出てくる。男女だけでなく、住んでいる場所とか生きがいとかそれに合わせたサービスとかは多様性になるのが当たり前になる。多様性がたくさん出てくると多様性は当たり前になり誰も言わなくなる。イノベーションも同じで誰もできていないのでイノベーションだとみんなが言っている。誰も改めてイノベーションと言わなくなるくらい普及するのが大事。日本企業は普及するためにコミットするべき。誰かがコミットしないと普及しない。役割分担をしていく必要がある。誰かが掘り起こしたものを世の中にスケールアップしたり、当たり前にして、普及させる必要がある。ここまでやらないと価値が上がらない。多様であることが当たり前になったり、世の中で価値となるものが今までは正解だった量の経済から、個の経済に移っていく。物理的距離、心理的距離でどうMaintainしていくのか、コミュニケーションしていくのかを無理やり、学ばさせられるトライアルさせられているのがCovid-19。一方で、日本は特殊な国。99%は同じ言語を話し、自粛しようと言われたら自粛する国。多様性の意味もUSと日本は大きく違う。USやカリフォルニアでは多様性は当たり前にそこにあるものだが、日本人にとっては多様性はディズニーランドみたいなもので憧れとかやらなあかんものみたいになっている。

日本もこれから不確実性高まるが、それは地図の無い世界みたいなもの。地図が無いと落とし穴に落ちてしまう。地図が無いところでやるべきものは探求。探求するのにはTry & Errorが繰り返されるのでいろんな意見が必要で、論理的に多様性が必要。日本は経済成長する中では同質性や均一性、継続性が重要だったが、これを否定する必要はない。ただ、不確実なことをしていくのであれば多様性が必要になる。多様性について語られなくなるくらい普通になればよいと思っている。

 

坪田:視聴者にシリコンバレーの使いこなすために前向きなメッセージをお願いしたい。

佐藤:私から言いたいのはシリコンバレーは正解を見つけにくる場所ではなく、正解を作る場所」という言葉。正解を作るにはやりたいことも含めて、自分で考えないといけない。やる上で大事なのはシリコンバレーと本社の距離。尊敬する友人の言葉を借りて言うなら、「本社とシリコンバレーの関係は太陽と地球の関係」。離れすぎると凍え死ぬし、近すぎると駐在員は本社の発想から抜けきれないので単なる出先機関になってしまう。自分が燃やされないくらい燃える熱意が必要。熱意は伝播して化学反応を起こす。誰も未来は分からないし語るのは難しい。でも勇気をもって伝播していく。そういう人をどう本社が支えるか。本社はキャッチャーではない。本社をどう動かすか一番わかっている人たち。半年ごとに役割を変えていくくらいのスピード感があってよい。

西城:昨年日本に帰国し、今は日本にいるのだが、シリコンバレーは確かに日本から見たときには夢の国、ディズニーランド、自分たちとは違う国みたいに人々から見られている。本社側がどうするかというと社内のコミュニケーションのハブにはなってほしいとは思う。シリコンバレーからの情報は材料であり、本社側はそれをうまく調理してほしい。情報を気になる人にパスしてあげてほしい。ボールが投げられなければ動かないのではなく、本社がボールを投げても良い。根回しは悪い意味ではなく、合意形成の手段・文化。うまく使えば良い。

伊佐山:佐藤さんのようにシリコンバレー来る前に準備するのは大事。本社の上層部も含めてよく理解できている状態でスタートするのが理想。ただ、駐在しているだけでは何も起こらない。どうやって本社を動かすか、準備をしておくのが重要。

シリコンバレーに来た後はコミュニティにうまく頼ればよいと思う。Pay forwardの文化、気持ちで後進にも貢献していくつもりで。もちろん等価交換できるお土産をきちんと用意するのが重要。日本の大企業は名刺やブランドを引っ提げていくと単純に偉そうだと思われる。個人として謙虚に人と付き合うのが大事。情熱も大事。理屈ばかりに引っ張られるが、みんな頭が良いので、あまり目立たない。ロゴスではなくエトス、倫理観、情熱、好奇心を持って活動してほしい。