ユニコーンに乗ってと理念経営とマーケティング

火曜10時ドラマの「ユニコーンに乗って」を観始めました。



最初はいつも聴いているニュース関連のポッドキャストで話を聞いて知って追いかけて観始めたのですが、なかなか面白く私は観ています。

 

筋立てはアン・ハサウェイロバート・デニーロのマイインターンに似ています。



新進気鋭の教育系(EdTech)スタートアップ「ドリームポニー」のCEOが永野芽郁、そこに中途社員として入ってくる元銀行員で年の差がある社員を西島秀俊が演じる。

 

西島さんと言えば、ドライブマイカーでアカデミー賞授賞式に行ったり、全米映画批評家協会賞では主演男優賞を授賞したり、アカデミー会員にも推薦されたりとと近年、引っ張りだこな役者さん。

永野芽郁は意外と色んな役でドラマで見かけてきましたが、主演ドラマを観るのは私は初めてかもしれません。

 

 お話としてはジェネレーションギャップやカルチャーギャップを楽しむドラマ…かと思いきや、西島さんは大変勉強家。

 

 1話では銀行員として支店長まで勤めて役員も約束されていたという描写があるから銀行という閉鎖的組織では非常に優秀だったという設定なのでしょう。元営業というフレーズも出てきました。

 

 西島さんがひたすらに気持ちがよい爽やかなキャラクターであり、カルチャーギャップに戸惑いつつも非常にテンポ良くキャッチアップしていくので、そこまで不快感も無い。むしろ、ドリームポニーというスタートアップの方がフワフワしていてお花畑みたいな組織に心配になる展開も多いです。

 

 なかなかに面白いなと思うのはスタートアップの面々が基本はCEO+社員5人しかいない中で無料の教育系アプリを初期投資家からの投資を元手に作り、新規事業を興していくという流れです。

 

■理念経営

 このお話で1番のポイントは「理念経営」でしょう。

 

西島さんが扮する元銀行員の小鳥さんは真面目なキャラクターなわけですが、CEOの理念に共感したことで会社に応募します。

 

CEO以外の社員はプログラミングができる、という点を鑑みると、普通なら採用されないスキルセットである小鳥さん。

 

1話目の面接シーンでも力強く、「「ITの力ですべての人が平等に学べる場所を作りたい」という理念に共感したから一緒に働きたい」という志望動機を話します。

 

社会課題でもある教育の問題ですが、特に教育は格差の問題が指摘されています。貧困の問題や家庭の問題などが原因で、平等な教育が受けられることが出来ないという子どもが世界中にいます。

 

今流行りのパーパス経営にも通ずる理念(ビジョン)経営ですが、CEOの理念に共感したからこそ、社会のために頑張りたいというのは「今どき」でもあるなあと思うのです。

 

小鳥さんはまさに今話題のワードでもある学び直しのアンラーニングとリスキリングを第2話以降で求められるわけですが、それもまた、理念に共感しているから頑張れるという構図になっています。

 

40代後半で銀行支店長であれば、少なくとも年収600-800万円はもらっていたでしょうから、転職して年収ダウンにもなってると予測できますが、それもまた自分がやりたいと思えることに頑張るからやりきれる、ということなのだと理解しています。

 

小鳥さんは1話の最後でジョブズみたいな格好になって写真に写りますが、これはなかなか反則級の面白さでした。

 

■ペーパーレスと資料チェック、そして、「チャット見てないんですか?」

 2話目。CEOから資料を確認したり、調べ物を頼まれて小鳥さんが紙を印刷するシーン。ペーパーレス化が基本になってるドリームポニーで自分のやり方を踏襲しようとして複合機で印刷を始める小鳥さん。

 しかし、ペーパーレスだと指摘を受けてしまうわけです。

紙ベースで資料チェックしてフォルダに入れてCEOに赤ペンで誤字指摘をして返していたわけですが、これに対して、クラウド上のフォルダだと分からずCEOは修正済みと勘違いして資料をメールで送ってしまいます。

そのせいで、初期投資家との打ち合わせでも手酷い指摘を受けてしまいます。

 とはいえ、これはCEOが悪いようにも思えます。

提出前に資料を自分で見直すのは当たり前です。

また、CEOのスケジュールの立て方もなかなかタイトかなあと思います。

投資家向け資料の最終チェックは前日までに終わらせておくべきでしょう。

 出発前にも狭いオフィスで小鳥さんに声もかけずに外に出て、まだですか?と連絡して「チャットを見て」というのもまたなんだかなあというエピソードでした。

 チャットを見る癖が無いという小鳥さんの気持ちも確かにわかるところはあります。

 

 近年、パナソニックへ出戻った樋口さんという経営者がパナソニックに戻ってすぐに着手したのがチャットの使用だったそうですが、旧態然としたパナソニックでチャットを根付かせるために組織ごとに競争までさせたというのですから、なかなかに驚きました。

それくらい昭和のおじさまはなかなか新しいテクノロジーを使いこなすことに疎いし、抵抗があるわけです。

 

 あと、初期投資家とのやりとりで元銀行員である小鳥さんの力が発揮される!?と思ったものの、必ずしもそういうわけではなかったというのがなかなか肩透かしではありました。

銀行の支店長まで経験していたのなら、P/Lとか経営や事業計画を見るのは得意なはずなんですが…

 

 更にCEOが憧れだという起業家である広末涼子扮する経営者のコンテストに応募するものの書類で落選します。

広末涼子は言いづらいことをズバズバ言いますが、貧困であったことを売り物にしてる、とかエドテックは儲からない!ということなど手痛い指摘をガンガンするわけです。

この辺りはなかなか痛恨の展開ですが、実際、こういう起業家は世の中に多いのだろうな…とも思った次第です。

 

また、1話目でアポに遅れてしまうCEOに連絡を入れたCTO、気が利いてるのは良いのだけど、CEOが遅れることをきちんと先方に連絡して謝罪くらいしておくのが、社会人ではないかなあとも思います。チームワーク…。

 

 2話目ではまだまだIT解説本片手にミーティングにも出ている小鳥さんですが、付箋だらけの本が彼の努力を他のメンバーにも分かりやすく伝える形にもなっています。

意外と本にも副次的効果があるのだなと思わされます。

分からないことは人に聞くか調べる、を地でいくわけですが、自走できる人材というのはなかなかに重要だなと思わされます。

(彼らの採用基準は自走する力、新しさ、素直さの3つ)

 

■2話目。インフルエンサーマーケティングとその誘発剤となるアナログな体験会。目標1ヶ月で20万人と施策の差

 

1話目で投資資金を投入してもらいたいわけですが、20万人の新規ユーザーを1ヶ月で獲得するようにという無茶振りを宣告されます。

 これはなかなかのハードルなわけですが、インフルエンサーマーケティングをやろう!という話が出てきます。

www.klear.jp

 つまり、自社のアプリをSNSで影響力のある人であるインフルエンサーSNSやら動画などで広めてもらって、多くのユーザーに知ってもらおうという取組みです。インフルエンサーマーケティングでバズろう!と掲げる目標の立て方。このドラマの小鳥さんは営業あがりの元銀行支店長という非常に地に足のついたスキルセットだから多分、思い浮かばないわけです。

 インフルエンサーマーケティング結局はうまくいきません

Edtechはよくわからないインフルエンサーが多く、取り扱ってくれる人がいなかったのです。

CTOの彼はインフルエンサーの元カノにまで頭を下げますが成果は出ません。

 

 そんな傍ら、営業経験がある小鳥さんはCEOがインフルエンサーマーケティングに取り組もうとする中で地道な体験会を1人でトライ。

 営業して開拓してモールの一角を借りてかなり広いスペースでがっつり一人で体験会開催しました。誰も助けに来ません。

 社長、そこは差し入れではなくて応援に行こうね…という気持ちになりました。

 しかし、社長はそこで小鳥さんの純粋な動機である「お客さんの一人一人と接したい」という声にヒントを得て「感度の高い人がたくさんくるお洒落なカフェで体験会をすれば良いのでは!?」という発想でインフルエンサーにまで来てもらうという流れになります。

 

ただ、教育系アプリでは体験会というのは実際行われるケースはあるようです。

prtimes.jp

 

■3話

 青春モノとして大変清々しく楽しめました。ってか、3話目が無いとCTOの彼への感情移入が難しかったかもしれません。

 

■4話目 投資家とランウェイ ドリームポニーはあと何ヶ月もつのか?

 第4話では投資してくれるという、投資家が突然オフィスに来訪するものの、西島さんのお陰でうまくその場を乗り切ります。

 

 ・スーツ姿は相手を大切に思ってるという気持ちを伝えるもの

 ・お客さんが来たら美味しい熱すぎないお茶をだす

 ・相手のお召し物をさり気なく褒める、など、

 

西島さんの社会人パワーがいかんなく発揮されます。

 

 ・投資家に会いに行くCEOが手土産を持っていたり、

 ・投資家の手土産のクッキーを社員で食べていたり、

 ・父親に会いに行くのに焼酎を持って行ったり。

ビジネスシーンのみならず手土産って重要よね、と思わせるシーンもありました。

 

ところで、お金が無くて困っているドリームポニーですが、社員の年収はいくらなのか?と思うとたとえ、若者ばかりで1人400万円だとしても社会保障でも+15%はお金が掛かるから460万円/年程度は会社が負担することになります。

 

 今どきのスタートアップが大卒や現役大学生をいくらで雇うか?ということになります。

 

 更にオフィス賃料が120万円×12=1440万円。460×5=2300万円。(月額38万円)

1440+2300=3740万円が年間に無くなります。

これを12で割り返すと、311万円が月間経費。

 

これにサーバーレンタル費用やら諸経費が掛かる。アプリのサーバー費用が20000円/月だとすると年間24万円。

あと、初期費用だが、会社のパソコンは支給だとすれば、仮にMacBook5台と考えると、18万円×5=90万円。諸経費乗ると100万円は超えます。

つまり、これだけでも年間で4000万円近くが消えます。

 

これで家賃が200万円/月になると確かにやばかった気もします。

それで、10ヶ月もつ、ということを西島さんが言うシーンがありました。

増分は200-120=80万円/月

80万円/月 × 12ヶ月=960万円。これが値上げにより、ドリームポニーが負担する増額分でした。

 

元々は311万円+サーバー経費2万円=313万円が月間経費だとすれば、家賃値上げ分の960万円はドリームポニーの月間の経費3か月分であり、3ヶ月死期を早めるということになります。

 

 つまり、ドリームポニーは大学時代のビジコンで100万円をゲットして起業した後、初期投資家が数千万円くらいの規模で出資してなんとか、1年ちょいくらいは食いつなげるようになっていたということになります。

 

 初期投資家は第1話から割とプレッシャーを掛けてきてる描写がありますが、担当者の若い男性は意外と社内会議でブレストに参加してたり、空気が悪くなるとお茶汲んできますーと言ってたりと、親身過ぎる初期投資担当者にも思えます。

 

 1話では投資担当者の上司は圧を掛けてきていたが、めちゃくちゃ心意気のよい投資家なのでは?とも思えます。

 まず、投資家も安い賃料のオフィスに移ってバーンレートを下げるようにアドバイスするべきではなかろうか?



 そもそも、マンションの一室とかで起業しても良いわけですし。(DeNAとかユーザベースとかはそうだよね。)

officee.jp

 

そこに1億円投資してくれるという投資家が現れますが、その時に思ったのは

・投資条件を詰めなくても大丈夫?(特に株式の種類とか)

・初期投資家にも相談すべきでは?

・色んな投資家を回る資金調達ラウンドしないの?

と言うことでした。

 

お酒飲んでる場合ではないし、投資家のバックグラウンドチェックとかしないマズイような…wiki見るだけでは不足でしょう。

信用できる投資家やらとネットワーク築いてちゃんと2-3人から評判聞くべきでしょう。案の定、酷い目に遭いそうになっていました。(怒りで顔面グーパンしようとする主人公のキモの座りっぷりが素晴らしいとも思いますが)

 

 そもそもドリームポニーの創業者3人の株式持分ってどうなってるのかなあ。三等分だろうか。

 あと、ストックオプション青山テルマやら小鳥さん(西島さん)やエンジニアの彼らにも付与してるのだろうか?

 あと、トレンディドラマに言っても仕方が無いことですが、主人公の部屋がオシャレで広い。

 

※ソファは13万円もするそう!
よく見るとトースターも1万円を超えるやつ。

こんなに広くておしゃれな部屋に住めるものなのか?

 

前クールの「正直不動産」の主人公くらいの部屋に住めとは言わないが、、、

 

 都内であの広さで一人暮らしするというのは親が大金持ちでないと有り得ないレベル感では?とは思う。

普通に家賃は10万円は超えるのでは?

年齢と状況考えるとそこは経営者として削るところでは?

 同僚の家は共同で暮らしてる部屋なので広めなのも納得はするが…。

 

この辺り、元貧乏少女を押しにしてるのであれば、もうちょい本人がどういう意図なのかは知りたいところだ。

 

 広告費を徴収するだけでは全く稼げないし、もし有料アプリにしてしまったら元々の理念に抵触してしまうからどうしても、嫌!というCEOの気持ちをきちんと汲み取れたのはなんと小鳥さんだけでした。

 広告がアプリに入ってくるだけでもやはりユーザビリティは下がりますしね。

 教育系アプリとして、色んな人にプレイしてもらいたいのはわかるが、無料でやりきるには無理では?とは感じました。

 と言うわけで悩みに悩んだ末のソリューションがプロダクトプレースメントだったわけですね。

honichi.com

メタバースの中で企業から広告を出してもらう、というプロダクトプレースメントは悪くないアイデアですし、メタバースでそれをやろうと言うのは今まさにトレンドではあります。

news.yahoo.co.jp

たとえば、メタバース上でマクドナルドがあれば、そこからECに繋がる、とかね。

NIKEとかまさに靴をメタバース上でも履けるというNFTで出してたりするわけですが、まさにここはまだ実験的な色合いの強い最先端の領域です。

 

■5話 ビジコン

スタディポニー

 最初のアプリはシンプルで、後にポニーの絵が追加されている。さまざまな出版社が協賛して問題文を提供していることになっている。ここで不思議なのは出版社はどうして社名まで出すことに同意してるのかなということ。今日日、出版社だってアプリを出すことを考える時代なので、ある意味競合になると思うんだけど…のちにアバターが若手エンジニアのパワーで進歩する。

 

スタディポニーキャンパス

1話のラストでは構想段階だったものが、5話である程度形になってくるのが、スタディポニーキャンパス。簡単に言うと教育系メタバース×学習アプリ。

 

 色んなことが思い浮かぶわけですが、これはなかなか技術的に大変な話でもあります。実際、ハイエンドなアプリにしようとして、ビジコン決勝前にアプリが古いスマホでは動かないという展開に至ります。

 

 スマホのアプリ使用推奨環境確認ってアプリ制作の世界では普通、最初にやることでは?とは思いますね。そこは迂闊すぎるってのは感じるところではあります。

 

 CGリッチなアプリにしたらメモリ食うのは間違いないわけでそこは勉強とはあんまり関係無いところですからねえ。

 

 ハイエンドスマホでしか動かないのはここまでの理念経営に反するわけで理念に沿っての判断となります。

 

 作ってた子は一回は怒って出ていくわけですが、小鳥さんの大人の説得で戻ってきます。こういう時にCEOが動かないのには違和感はありますね。勿論、小鳥さんの見せ場作りのためなんでしょうけども…。

 

随所に出てくる理念経営は少ない商品群で勝負するスタートアップだからこそ、みんなを引っ張る力強いリーディング力にもなるし、判断基準にもなりえるのだろうなと思わされました。

 

お話はトレンディドラマよろしく6話目以降は恋模様も描かれるようですが、果たしてこのスタートアップがどうなっていくのか?は気になるところです。