カリフォルニア・シリコンバレーの日常 山火事・貧困・テック業界のあれこれ

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 カリフォルニア州シリコンバレーに住んでいるともはや、日常と化してしまった。空気の汚染度であるAQI(Air Quality Indicator)の数値を日々アプリで確認して外に出るか出ないかを決めるという上海やムンバイでしかやらないだろうと思っていたことを世界中の投資や技術の粋が結集するはずのシリコンバレーでやっている。

 朝起きると喉が少し痛いのは、部屋の窓を閉めていてもかすかに空気が入ってきているからではないかとも感じる。Costcoでは空気清浄機が山積みで売られていて翌週にはすっかり売り切っていたし、Amazonでも一部の空気清浄機はすっかり売り切れだ。家にある空気清浄機は日々フル稼働だ。なかなかカリフォルニアの山火事は収まらないし、大気汚染されていて気軽に散歩も出られず、連日、家にこもっている。

シリコンバレーに世界中から集まってくる富やテクノロジーはなんら、人々の健康的な暮らしを助けていない。

 若者を中心にうけていた短い動画をUpできるSNS TikTokユニコーンと持てはやされていたが、米国からBANされてMSに売るだの、オラクルに売るだの、言っているうちにオラクルが主導権を握った。

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 TikTokで雇用は生まれるかもしれないし、それもまたUSにとっては大事なことだろうが、この大気汚染や収まらないコロナを見ていると西海岸の雰囲気の変化を感じざるを得ない。空気をきれいにするスタートアップだとか、火事を抑え込むテクノロジーは出てくる気配もない。

 オラクルのキャンパスが近所にあるので、久しぶりに空気がきれいになってきてAQIが100を切ったので散歩してみた。2週間ぶりくらいに家族でも散歩できた。オラクルはほとんど出社していない様子だが一部の人は出社している様子だった。オラクルのキャンパスは木々がたくさん生えていて非常に散歩のしがいがある。まだ夏が終わりかけているだけなので太陽が出ればそれなりに温かく、歩くと少し汗ばむ。太陽も先週はほとんど山火事の煙のせいで出ていなかった。太陽が燦燦と輝いて、どこまでも澄み渡る青い空だけがカリフォルニアの鬱屈したそれでいてそこそこに忙しいWFH生活を昼間に癒してくれる存在だったが、それすら奪われたことでかなりフラストレーションがたまっていた。久しぶりに外が歩けて短時間だが、ストレスが少し軽減した。

 

 娘をプリスクールに送り届ける途中でいつも車の中から色んなシリコンバレー企業の建物を見かける。Huaweiもその一つ。

 9/15を境にHuaweiは米国由来の技術や装置を使った半導体を使えなくなってしまった。

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 ここ1年くらいの間、テクノロジー業界を騒がせてきた米国政府とHuaweiの問題、米中貿易摩擦の主役ともいうべきHuawei。その、Huaweiシリコンバレーの拠点は家からほど近いところにあり、毎朝、近くの道を自動車で走っているが、コロナ禍を前後してシリコンバレー拠点には車が停まらなくなっており、建物からは看板が外されていないものの、最近になって、誰もいない建物と化していた。Huaweiの動向は世界中の人々が気にしていて、自分が働く会社でもそれは同様だ。

 Huaweiシリコンバレーの向かい側には今話題のNVIDIAの本社社屋がある。

NVIDIAと言えば、つい先日、ソフトバンクGから英国armの買収について取り決めたばかりだ。

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 NVIDIAは立派な本社社屋を建てており、更に同じ形の本社社屋をもう1棟建てている最中にコロナがやってきたため、新棟建設もなかなか進捗が悪そうだ。日々の建設風景は朝の娘のプリスクールへの送迎中に自動車から見ている。NVIDIAは今回のarm買収で株価をさらに伸ばしている。せっかく建てた新しい本社にはほとんど社員が通っていることはなさそうで、がらーんとしている。もともと吹き抜け構造の大きな建物だけに、コロナとの相性はすこぶる悪そうだ。(これはApple Parkにも言える)

 

 こういう日々のニュースを賑わす会社がすごく身近にあり、そうした世界を賑わす会社の近くで生活しているんだなあ、ということをつくづく感じるわけだが、こういった会社がいくら色んなことを繰り広げてもシリコンバレーに住む人たちが直面する課題は全く解決されず、誰も出社できず、自宅勤務で、学生も在宅学習になり、小学生や中学生の子どもを持つ親はWFH x 在宅学習で大変な目に遭っている。こうした問題を身近で少し解決しているのはZoomくらいか?

 

■貧困格差

 更に、元々そこそこにホームレスがいることがサンノゼの社会問題となってきたが、ここにきて、サンノゼに限らずこれまではホームレスを見かけなかったような場所でもホームレスを見るようになってきた。(これまでだと、近所で言えば、サンノゼダウンタウンにある川沿いあたりが非常にホームレスが多かった)

 フリーウェイ280の乗り場、クパチーノのウルフあたりですごいホームレスの集落ができてるが反対側のApple Park側にもホームレスがいた。ニュース記事によると、サンノゼなどと違ってクパチーノにはホームレスの避難所は無いそうだ。クパチーノの市民たちもこういうホームレスを見ることそのものに慣れていないという。

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 Apple Parkではちょうど、9/15の今日、Apple watch 6やiPad Airの発表があり、録画映像では未来的なApple Parkの建物の中からCEO のTim Cookは製品やサービスを紹介していた。

 世界一の時価総額を誇る電子機器メーカーApple、その究極のブランド力の象徴ともいえる総工費5000億円とも言われるApple Parkのすぐ目の前にホームレスたちのテントがある。ホームレスがいた場所にはクパチーノ市が用意したという簡易トイレまで置いてあった。あのあたりは治安が良かったはずが、物騒になっている。もう何ヶ月もあの状態と思う。280の前を通るたびにぎょっとするし、人を轢いてしまわないかと思い、すごいゆっくり侵入していく。結構きわどいところにテントができている。

 近所のセーフウェイの近くにもホームレスが2組ほどいる。基本無害とは思うもののやはり、ちょっと警戒してしまう。子どもたちや妻が出歩くときは夜は控えないといけないと感じさせる。大好きでよく立ち寄るStun Donutsでもたまに入り口で白人のご老人にお金を持ってるか、貸してくれないかとか言われる。現金オンリーって知ってるからなんだろうが…「段々治安が悪くなる」というのはこういうことなのかと実感している。ホームレスの数が増え、キャンピングカー暮らしの人が増えてきている。キャンピングカーとか気が付くとすごい数停まっててまたもや、ギョッとする。

 正直、貧困問題を深く考えるようなことは普段の生活ではあまりないのだが、ふとしたことで目にする。

 今、空気はものすごく悪いが、だんだん治安も悪くなっていっているように思う。今後も気を緩められないなと思う。シリコンバレーはこうした貧困の問題も山火事や空気汚染と同様になんら解決できていないし、する気も無いようで、その事実もまた、残念だと思う。昔もそういう話をしたが、本当に皮肉な話だと思う。

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