シリコンバレーが生み出すなにか

今日はこの記事について。

気になるところのみ抜粋する。

www.nikkei.com

 

シリコンバレーの玄関口、サンノゼ空港にほど近い空き地に壊れかけのキャンピングカーやあばら家が並ぶ。ホームレスに占拠された土地を所有するのは時価総額で世界首位のアップルだ。

リンゴのロゴをかたどった看板は見当たらない。「アップルの土地? 知らないなぁ。トイレや水道もない場所はただの荒れ地。誰のものでもない」。この地に2年住むという60代男性は吐き捨てる。

「占拠村」の拡大は8月中旬、ピタリと止まった。地元のホームレス支援団体が自立支援を開始し、住民がホテルなど一時的な住まいに移転したためだ。自立資金はアップルが提供する。50人以上いた住民は約3週間で敷地内からほぼいなくなった。

「アップルはホームレスをただ追い出すこともできたが、社会の一員として支援する道を選んだ」。支援団体「ホームファースト・サービシーズ」のアンドレア・アートン代表は同社の決断を歓迎する。

アップルはこの1年半で10億ドル(約1100億円)以上を住宅問題の解決に拠出した。格差の象徴であるホームレス問題に関与するのは米アマゾン・ドット・コムも同様だ。シアトル市内にある新本社ビルの一角を家族向けホームレス支援向けに無料提供した。

2008年、米銀業界は金融危機公的資金の注入でしのいだが、社会問題に積極的に関わる姿勢を示してこなかった。若者がウォール街を占拠して格差問題を訴えても静観した。ツケは回ってきた。「米銀業界は評判を立て直すのに30年かかる」。米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は嘆く。同社は最近、社会貢献に力を入れるが、一度定着した業界への反感を拭うのは簡単ではない。

ウォール街のわだちは踏むな――。IT(情報技術)大手は地域との共存共栄を慎重に模索している。プライバシー問題や寡占批判で不信感が高まる状況ではなおさらだ。

アップルの空き地では支援団体メンバーがホームレスに聞き取り調査し、仕事の有無や家族構成などに合わせて支援内容を決める。10年前、ニューヨーク市ウォール街占拠運動のメンバーが公園から警察に強制排除されたのとは対照的だ。

 

正直、記事後段のベゾスのくだりはあまり興味が無いのだが、(宇宙開発や旅行は将来の貧困問題を解決する可能性だってゼロではないしね。)確かにテック大手のCEOが世界の富を占める割合が高まる中で、足元のシリコンバレーのこの惨状はどうにかならないのか、というのはある。

 

サンノゼ空港の近くの空き地、今回取り上げられている場所はざっと言えばPaypal本社の裏あたりだ。

このGoogle Mapの画像で言えば、真ん中の上側の建物がApple所有の建物になっていて、その左にある、空き地が問題の場所だ。

f:id:kikidiary:20210916105133p:plain

Google Earthで見てもこんな感じでホームレスが生活している場所だといことがわかる。

f:id:kikidiary:20210916105240p:plain

 

 正直、私はホームレスのためにそれを救おうなどという活動すらしていないので、Appleのやっている支援自体は素晴らしいと褒めることしかできないし、批判することも出来ない。ホームレスたちにもそれぞれ個別の事情があるのだろう。

 ただ、実際にこの場所を車で先日横を走り抜けたとき、まあ、なんとも言えないにおいがして、それは臭いとかではなくて、多分、ハイになってしまうようなドラッグ的な何かと思われ、(私は生まれてこの方、経験が無いが、サンフランシスコなどでもよく臭うあのにおい・・・)ちょっと気分が落ち込んだ。

 ホームレスが住まうエリアは他にも川沿いや高速道路の高架下など、そこかしこにあり、空港周辺だけでもかなり多くのホームレスを見かけるし、その数はこのコロナ禍で確実に増えている。普通の道で信号待ちをしている時にお金を集めているホームレスがいるし、コストコの出口にもいつも段ボールを掲げたホームレスがいる。セーフウェイに行くときにも見かける。サンノゼダウンタウンもひどい。公園の周りなんかも安全性を全く感じない。なんなら家の近くにもホームレスが住むキャンピングカーがたくさん路駐していて、少し怖い。

 ホームレスであるだけでもなかなか立ち直れないのに、ドラッグにおぼれてしまってはもっと社会復帰が難しくなる。もちろん、個々人が社会復帰したいのかどうかもわからないのだが、だれしも普通の家で普通に暮らしたいと思うのではないかとも思う。記事ではこの占拠村の拡大は止まったとあるが、私が見たときはまだこのホームレス集団はいたと思う。たとえ、お金をあげたり住む場所を一時的に確保してあげても、ドラッグに使ってしまったり、社会復帰に使わなかったらある意味では、あまり生きたお金の使い方にならない。

 州は違うが、フィラデルフィア州では、下記のような動画が話題になり、日本でもあまりの動画の悲惨さに話題になったばかりだ。この記事の動画は正直、ショッキングだ。映画の撮影かと思いたいが、フィラデルフィアのある地域での日常だそうで、アメリカという自由主義国家の完全なる闇の部分と言える。サンフランシスコでも一部の通りではこういう雰囲気のところがある。(結構街中で、大変危険を感じるエリアでもある)この動画を見ると、正直一度ドラッグ漬けになってしまったら、なかなか復帰できそうにもないのは一目瞭然だ。一時的な快楽のために人生を棒に振ってしまっている。

www.excite.co.jp

 一方で、個人個人が立ち直るためにはどうしたって、社会的支援が必要なわけで、Appleやその他の会社がしていることそのものは支持されるべきとも思う。

 世界にはAppleAmazonに留まらず、何兆円もの時価総額をつける会社があって、高く評価されて、スタートアップや大手企業に勤める人たちが時にSOやRSUで大金を手にする。そうした会社はシリコンバレーにたくさんあって、例えば、このエリアのすぐ横にあるPaypalにしてもPaypalマフィアなどと呼ばれる人たちが上場で大金を手にして投資家になり、またこの好循環によってシリコンバレーのスタートアップは尽きることが無い資金が流れ込み、そして、またその狭いVCやスタートアップの業界で還流している。この資金還流、流れの中にいる人たちは良いのだが、こうした流れに参加することも出来ないまま、社会のセーフティネットからも零れ落ちてしまっている人たちが相当にいる。

 できれば、そうした人たちが救われればとも思うが、世の中はBNPL(Buy Now Pay Later)みたいなサービスは普及するが、それ以上のことは起こらない。BNPLも貧困層をターゲットにしたサービスだと私は思うが、市場はそうした流れを歓迎している様子だ。

 会社や政府が資金を投じても一瞬、その人たちが少し暖かい布団で寝られるだけで、根本解決には遠い。前も、Techが何の助けにもならないという話をしたが、本当に社会課題を解決するのは何なのか、というのはもっと議論されてほしいなあととみに願う。